オルゴールの音色
うちの娘が
まだ赤ちゃんの頃に
お気に入りだった
あるオルゴールがあります
クマの人形のようなオルゴールで
ひもがぶら下がっていて
それをグイッと引っ張ると
メロディが鳴るのです
そのオルゴールの人形を
しばらくうちの部屋の壁にかけていて
まだ1歳にも満たない時から
よく娘を抱っこしては
一緒にひもを引っ張って
オルゴールを聴かせたものです
娘は
そのオルゴールの奏でる
優しい音色を聴くと
いつもとたんに笑顔になって
奏で終わるまで
ずっと楽しそうに聴き入っていました
流れている間
僕と娘は
そのオルゴールの音色と共に
静かで穏やかなひとときを
過ごしたものです
そんな
娘のお気に入りの
僕にとっては
なんとも優しい気持ちにさせられる
この素敵な思い出の
オルゴール
…ですが
部屋の模様替えか何かの拍子に
壁から外し
どこかのオモチャ箱の中に入れっ放しにしてありました
と
そんなある日のこと
うちで子供たちと遊んでいたとき
ふと
オモチャ箱の中から
久しぶりに
その例のクマさんのオルゴールを発見
う~ん
えも言われぬ
懐かしさがこみ上げてきて
赤ちゃんだった頃の娘との
つかの間の
楽しい思い出を
再び呼び覚まし
その余韻に浸ろうと
オルゴールのひもを
グイッと引っ張って
その優しい音色に
じっと耳を傾けました
…ら
と
ん
あれ
オルゴールから流れてくるメロディのテンポが
なんとなく
微妙に
速い…
気のせいかな
こんなに速かったっけ
娘との穏やかな思い出のひとときが
こころなしか
忙しく
脳裏を横切っていきます…
おいおい
ちょっと…
大切な思い出が
あれよあれよと過ぎていく感じで
う~ん
なんとも調子が狂っちゃいましたね…
そうして程なくして
箱の中から発見しました
もう一体の
クマさんのオルゴールを…
あれれ
2個あったんだ
そうです
実は
知人から同じクマさんのオルゴールを
お祝いでもらっていたのです
まったく同じものなのですが
よく見ると
ひもの取っ手の部分が
ちょっとだけ違う
最初に手にしたオルゴールは
新しくもらった方で
本体も新品なので
今までさんざん聴いてきた元の物よりも
明らかにテンポが速く
音も明瞭です
う~ん
でもなんかしっくりこないんだよな…
そうしてそれから
元のオルゴールを手にして聴いてみたら…
経年劣化によるものでしょう
新品の物より
ひももへたっていて
流れるオルゴールのメロディも
どこかたどたどしい感じで
ゆっくりとしたテンポ…
でも
いやあ
これなんですよ
これこれ
このけっこう年季入ってる感じ
ほんの数年前のことですが
なんだか赤ちゃんだった頃の娘との思い出が
たちまち
じわ~と蘇ってきて
思わずちょっとウルッときちゃいましたね
う~ん
新しい方のオルゴールが
僕の思い出の音色にかわるまでは
もう少々時間を要するということですね
それにしましても
あらためて
オルゴールの音色っていいですね
古いぶん
余計リアルに思い出として実感できて…
音の中に
思い出が封印されているようです
音楽の力って大きいですね
というわけで
めでたしめでたし
でした
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