映画『ジャンヌ・ディエルマン』
1975年製作
ベルギー、フランス合作の
『ジャンヌ・ディエルマン』
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監督はベルギー出身のポーランド系ユダヤ人
シャンタル・アケルマン(1950-2015)
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いやあ
知る人ぞ知る伝説の監督です
本作で提示された視点が
映画史にもたらした影響は計り知れないものがあります
原題は
『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』
となっていまして
本作は
ある平凡なシングルマザー、ジャンヌの
3日間のリアルな生活模様を
全編、固定されたカメラによる長回しで
延々と映し出した野心作です
上映時間は実に201分
と
一人のシングルマザーの
どこまでも単調な毎日
皿を洗う
お肉をこねる
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じゃがいもの皮を剥ぐ
隣人の赤ちゃんの子守をする
靴を磨く
一人息子と食事する
ベッドのシーツを整える
そして
男性を部屋に引き入れて売春行為をする
浴槽で体を洗う
…
ひとり忙しなく
しかし淡々と繰り返される
日常の絶え間ない反復
ふと
にわかに垣間見える
孤独感
フラストレーション
抑圧された状況
そうした負の感情が
一連の規則正しい家事の動作に
少しずつ影を落とし始め
徐々に意識が変容し
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芽生える殺意
唐突に男性客をベッドで刺殺
やがて精神の異変をきたすに至ります
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本作における革命的とも言われる視点
それはドラマ性から最もかけ離れていると思われた空間
キッチンをはじめとする
主婦の日常の家事そのものに
カメラを向けた点にあります
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これは実はとても新しい視点で
ここで描かれるキッチンは
ただのキッチンではありません
男性の目から見た女性
…というあり方から解放された
いわばプライベートでパーソナルな空間
人目を気にせず
ありのままの自分でいられる場所という意味で
まことラディカルな話なのです
本作がフェミニズムの代表的な映画と言われる所以です
なので3日間のジャンヌの一部始終が
真正面に据えられた長回しのカメラで
ある種、生態学的なまでの眼差しで
容赦なく克明に捉えられ
その生の姿が余すことなくさらけ出されているのです
『去年マリエンバートで』などで知られる往年の名女優
デルフィーヌ・セイリグが
セリフが極端に少なく
終始無表情を貫きながらも
ミニマムな空間内における身体表現を通して
鬱屈とした女性心理を的確に表現してみせます
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そして
何のドラマも起こらないかのような
単調で執拗な反復動作から
やがて思いもよらぬ事態へと変容していく
このサスペンスの妙
う〜ん
アケルマン監督は
男性優位社会を生きる女性の精神的危機を
独創的な視点
前衛的な手法を用いて
戦略的に描いてみせたのです
いやあ
その手腕にはただただ脱帽するばかりです
つくづく
映画表現とは
優れたドラマとは
一体何でしょうか
映画『ジャンヌ・ディエルマン』は
観る者の目を開かせる
真に革新的な映画です
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