デレク・ジャーマンの美学

「私の世界は

今や粉々に砕け散って

再び組み立てられるかどうか疑わしいほどだ。

破片の世界を支配している神は沈黙だ。

あまりの静けさに

私は声をたてずにはおれなかった。

自分の存在を確かめるように

神を

沈黙を

冒涜した。」

イギリスが生んだ異端の映画作家

デレク・ジャーマン(1942-1994)の言葉です

↓↓↓

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生前より

ゲイであることを公表していたジャーマンは

1986年にHIV感染が判明し

1994年、エイズにより

わずか52歳でこの世を去ります

しかし彼は短い生涯において

ゲイであるという

自らのセクシュアリティに誇りを持ち

その研ぎ澄まされた感性を爆発させるように

時代の空気を鋭敏に捉えた

官能的で独創性に富んだ作品を

次々と発表していきます

そこにはジャーマンの

性的マイノリティとしての孤独感や

エイズを発症してからの苦悩など

生々しいまでの心の叫びが

斬新な映像手法を用いて表現されていました

◎『ラスト・オブ・イングランド』(1987)

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廃墟、同性愛、核戦争、テロ、死、個人の記憶

様々なイメージの断片をコラージュした

野心的な映像詩

彼自身の

実際のプライベート・ムービーなども用いていて

とても私的な作品ですが

そこにイギリスの終焉という

ペシミスティックなイメージを投影させることによって

終末論的な世界観を生み出しています

◎『ヴィトゲンシュタイン』(1993)

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哲学者ヴィトゲンシュタインの生涯を

大胆な解釈によって映像化

ゲイである自身のセクシュアリティと向き合う姿や

ユニークな自己探究などを

少年時代と現在を交差させながら

独特なタッチによる映像美で描き出した異色作です

◎『BLUE ブルー』(1993)

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ジャーマンの遺作

なんと

映像はタイトルの通り

青一色の映像が映し出されるのみ

そこにエイズによって死期を悟った

ジャーマン自身によるナレーションが被ります

実際、彼はこの時

すでにほぼ失明していたと言われています

病に侵されていく彼の悲痛な声と

ひたすら流れるブルーの画面の

このある種の共鳴

観る側に少なからぬイマジネーションを喚起させる

不思議な映画体験

ジャーマンが最期に遺した

究極のコンセプチュアル・フィルムと言えましょう

というわけで

いやあ

あらためて

デレク・ジャーマン

独自の映像美学に貫かれた

無二の感性の持ち主

つくづく

こういう人を

真に独創的と言うんでしょうね

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