映画『ブルーベルベット』

1986年のアメリカ映画

『ブルーベルベット』

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監督・脚本は鬼才

デヴィッド・リンチ(1946-)

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タイトルと同名の

オールディーズの楽曲が奏でる

甘美なメロディに乗って…

真っ青な空

白い柵に

真紅の薔薇

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よく晴れた日の

のどかな田舎町

笑顔で通り過ぎる消防士

横断歩道を渡る登校時の子どもたち

優しく穏やかな空気が流れる

日常の平和な光景

男が庭で水を撒いている

程なくして

ホースが絡まり

水が吹き出し

男は

おもむろに倒れ痙攣する…

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そうして

カメラは

倒れた男を尻目に

草むらの中へと

ズンズン分け入っていき…

やがて

激しくうごめく虫たちが

画面いっぱいに映し出される…

日の光の眩しい

平穏な日常の陰で

黒々と横たわる

ダークサイドの闇…

これから始まる物語の

不穏な行方を

自ずと予見させる

秀逸なオープニングです

発作で倒れ病院にいる父を見舞った

大学生のジェフリーは

帰り道

ふと

野原で

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切り落とされた人間の耳を見つける

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ジェフリーは

好奇心から

その真相を探ろうと

ひとり奔走し

やがて

あるキャバレーの女性歌手

ドロシーの存在へと行き着く

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ガールフレンドの制止を振り切って

こっそりドロシーの家に忍び込んだ彼は

しかしそこで

見てはいけない

アブノーマルな光景を目撃してしまう

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クローゼットに隠れたジェフリーが

覗き見たもの

それは

ドロシーが謎の男と繰り広げる

サディスティックなSMプレイの

一部始終だった

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日常に潜む暗部…

ジェフリーは

いまだかつて知り得なかった

禁断の夜の世界に

自ずと入り込んでいく

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サイコパスな犯罪者フランク・ブースに

夫と息子を誘拐され

彼の支配下に置かれているドロシーだが

その一方で

暴力的行為に快楽を覚える

マゾヒスティックな性分を露わにし…

そんなドロシーに

奇妙な愛情を抱き

やがて深い仲となるジェフリーは

彼女を助けようと

ひとり奮闘するのだが…

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厳然と存在し

決して交わることのない両極

表と裏

善と悪

光と陰

正と邪

つくづく

後者の世界の

この倒錯的で

グロテスクな

しかし

抗いがたい魅惑に満ちた

悪夢のイメージ

う〜ん

映画は

欲望と暴力が渦巻く

底知れぬ泥沼の渦中へと

青年を

観る者を

引きずり込んでいきます

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いやはや

何しろ役者陣が最高です

得体の知れない変態野郎を演じた

デニス・ホッパー

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母バーグマンの美貌を受け継ぎながら

正統派美人女優としての

路線、キャリアをかなぐり捨てて

闇に生きる女を

文字通り、体当たりで熱演した

イザベラ・ロッセリーニ

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この頃は初々しかったですね

リンチお気に入りの

カイル・マクラクラン

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そして

おののき顔がすでに堂に入っている

ローラ・ダーン

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つくづく

後のリンチ作品に通底する

ビザールな世界観

連鎖的な悪夢の拡がりを見せる物語展開など

その特異な作風は

本作をもって確立します

そうして以降

怒涛のリンチワールドが

止まるところを知らず

創出されていくのです

というわけで

『ブルーベルベット』

鬼才リンチが生み出した

幻惑と陶酔のドラマ

いつまでも脳裏に焼きついて離れない

強烈な磁力をもった映画

いやあ

今更ながら

傑作です

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