奪われた名画のゆくえ
2018年製作のドキュメンタリーです
↓↓↓
1933~45年もの間
ナチス・ドイツがヨーロッパを侵略し
手中に治めていった際に
ヨーロッパ各地で
略奪・没収した美術品の総数は
およそ60万点に及ぶとされています
そしてそのうちの約10万点の行方が
現在でもいまだ不明で
見つかっていない作品の中には
ピカソ、ゴッホ、フェルメール、マティス、モネなど
錚々たる画家の作品も
多々含まれているんだそうです
う〜ん
驚くべき話ですね
この行方知らずの10万点は
戦時中の爆撃によって
破壊焼失してしまったのか
戦争のゴタゴタで埋もれてしまっているのか
あるいは
どこかに誰かが隠し持っているのか…
いまだ定かでなく
現在も略奪された美術品を奪還すべく
世界中で調査探索が続いているのですが
本編でも取り上げられている
ある事件が
2012年に明らかになります
ドイツ人の美術品収集家
コーネリウス・グルリットの自宅から
ピカソ、マティス、ルノワールなど
1,280点もの美術品が発見され
それらが
ナチスの略奪品だったことが判明したのです
彼の父ヒルデブラント・グルリットは
かつてヒトラーの画商だったとのこと…
いやはや
衝撃の事実ですが
まあでも
ナチスの末裔が隠し持っていて
闇で取引されていたりするのは
想像に難くない話ですね
こういった話は
今後も明るみに出てくるんでしょうね
きっと…
って
それはそうと
よくよく
美術品などは
戦争における戦利品としての
意味合いが濃いのも事実でして
世界の名だたる美術館においても
そうした経緯で
所蔵されている品々も
大なり小なりあるのではないでしょうか
と
それにしましても
第二次世界大戦当時のナチスの美術品収奪は
本編を観るまでもなく
常軌を逸していましたね
↓↓↓
青年時代に画家志望だったヒトラーは
故郷に近いオーストリアのリンツに
総統美術館を建設することを計画し
それをユダヤ人排斥の名のもとに推し進め
具体的には
ヒトラーとNo.2ゲーリングが
互いに競い合うように
美術品の収集に邁進し
ロスチャイルドなどユダヤ人富裕層から
略奪・没収を繰り返していったのです
と
興味深い話ですが
ナチス・ドイツは
アーリア人第一主義を体現する
写実的でわかりやすい作風の
古典主義的な作品を擁護する一方で
ピカソやゴッホ、ゴーギャン、シャガール、クレーetc
いわば表現主義、印象派、キュビスムなど
現代絵画を
「退廃芸術」として
弾圧の対象としました
にもかかわらず
退廃芸術の烙印が押された作品を
ゲーリングがひそかに収集していた事実が
判明するなど
一筋縄ではいかない事情があったようで
美術コレクターでもあったゲーリングにとって
退廃芸術だろうがなんだろうが
いいものはいい
と所有欲を抑えることができなかった
ということでしょうか
つくづく
政治の枠内に収まりきらない
芸術の持つ魅力
抗いがたい磁力
その影響力の大きさを
思わず垣間見た次第です
そんなこんな
約10万点の行方不明となった作品の
その後の行方と
そこに関わった人々の運命を
多数の証言に基づいて辿った本作は
う〜ん
戦争と芸術についての
多くの示唆に富んだ
貴重なドキュメンタリーとなっています
というわけで
最後に
ピカソの言葉を引用
↓↓↓
「芸術家とは何だと思う?
目で見るだけの画家や、耳で聴くだけの音楽家がいるとしたら愚かだ。
芸術家はこの世の悲劇や喜びに敏感な政治家であるべきだ。
無関心は許されない。
絵は家の飾りではなく、敵を攻撃し防御するための手段なのだから」
この記事へのコメントはありません。