映画『MEMORIA メモリア』

2021年製作

タイ・コロンビア・フランス・ドイツ・メキシコ・中国合作の

『MEMORIA メモリア』

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監督はタイの鬼才

アピチャッポン・ウィーラセタクン(1970-)

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主演は個性派女優

ティルダ・スウィントン

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う〜ん

稀に見る異色作です

コロンビアのメデジンに住むジェシカは

ある明け方

不穏な爆発音が頭の中で鳴り響き

それ以来、不眠症になる

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そんな彼女が

その原因を探るべく

いろんな場所へと足を運び

人との巡り合いを通して体験する

記憶を辿る旅

じっと立ち止まった映像

淡々と穏やかな

日常の中にあっての

この

極端なまでの長回しが生む

ある種の違和感

異化作用

何かあるのかと

つい勘繰って観てしまう

時は

どこまでも

ゆっくりと

流れていく…

音を巡る話です

画面に宿る静謐な佇まいと

反比例するかのように

強調される

日常の現場音

街中の雑踏における

人々の声や自動車の忙しない音

また後半は一転

鬱蒼とした森における

様々な自然音

川のせせらぎや

鳥や虫の鳴き声、雨音など

う〜ん

つくづく

豊穣なまでの音に満たされた中にあっての

この

時折

唐突に響く

爆発音

彼女の耳にだけ響く

この奇妙な音は

一体

何の音だろう

果たして幻聴だろうか

そんなある日

ジェシカは

自身の中の音に従うまま

人骨を研究する考古学者と出会い

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街から遠く離れた

ある森へと分け入っていく…

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あらためて

独特の間合い

超然とした時間

そうした流れの中で

度々起こる

奇妙な出来事の数々

こう

何というんでしょうか

存在していない人がいたり

記憶が噛み合っていなかったり

どこか

この世とあの世

目に見えるものと見えないもの

別次元の世界

などが

特別なことではなく

日常の風景と同じように

あくまで

自然に溶け込んで

共生するイメージ

そこに

特段のインパクトをもたらすことはなく

森や建物

事物や事象

そこに生きる動植物や人間たち

そして目に見えない精霊たちまでも包含し

存在するもの全てをもって

この世界が形成されている

映画は

タイの風習に根ざした

アピチャッポンの特異な思想が

美しく抒情的な映像で

丁寧に表現されています

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特筆すべきは

終盤の森の中でのパート

ジェシカは川のほとりで

魚の鱗取りをするエルナンという男に出会います

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前半に登場した

存在しない(⁈)音響技師の男と同じ名前…

ちょっとその関係性は不明です

エルナンは

全ての物には物語があって

彼はそこに刻まれた記憶の

いわば波動を読み取ることができる、と

そうして落ちている石を拾い

その中に記憶された物語をとうとうと語り出します

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そんな彼が途中

その場で横たわって眠りはじめます

目は半分開いた状態で

まるで死んでいるように見えます

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う〜ん

この眠った状態が

一体何分続いたのでしょうか

周囲は動いているので

決して静止画ではないのですが

これはちょっと驚愕です

超長回しによる

ほぼ硬直したままの睡眠状態の後

やがてエルナンは目覚めます

何なんだ〜⁈

さらに

2人はエルナンの部屋へ行き

そこで腕を触れ合い

じっと静止します

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これがまた恐ろしいまでの長回し…

すると彼女は

ある種の記憶に感応する

身体的な感覚を覚えるようになり

程なくして幼い頃の記憶が蘇り

過去の様々な音が聞こえてくるが

しかしそれは彼女でなく

実はエルナンの記憶で

つまり自分は

すべての記憶を溜め込むハードディスクで

ジェシカはそれを受信するアンテナだと

彼は言います

やがてまた

例の爆発音が鳴り響き

ジェシカが窓辺で耳を澄ますと…

(以下、ネタバレ御免)

森の奥深くに潜む

謎の宇宙船が突如現出

爆発音は

この宇宙船から放たれる衝撃波の音で(!)

宇宙船は空高く飛び去って

消えていく…

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う〜ん

あまりに唐突な展開…

これは一体

どういうことでしょうか…

つくづく

ジェシカは

異世界の存在を感知しうる

高い受信能力を保有していて

ゆえに

彼女の身の回りでは

不可解な出来事が度々起こっていた

ということでしょうね

思うに

本作における

ジェシカという存在

またエルナンも然りですが

彼女たちの

理性や知性だけでは決して言い表せない

類稀な感性とでもいいますか

いわば

理屈で説明できないものや

目に見えないものを知覚する力が

いま

求められているということ

そして

ある音に端を発し

遠い記憶や歴史を共有しうる

深い精神性が

稀有壮大なビジョンとなって

本作で示されているということ

ふぅ

よくよく

アピチャッポンによって創出された

この美しくも

摩訶不思議な世界観に

ホトホト打ちのめされる僕がいます

って

あらためて本作は

主演のティルダ・スウィントンの

中性的な存在感

自然体で慎ましやかな風情があって

成り立つ作品なのかなと

実感する次第です

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というわけで

これはすごい映画

アピチャッポンのきわめて特異な

多元的価値観が結実した傑作

かなり難解ではありますが

いやあ

是非とも必見です

おまけ

アピチャッポンの

『ブンミおじさんの森』について

以前書いた記事は→こちら

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