映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

先日のマレーシア旅行の際

行き帰りの機内で映画を

なんと5本も

ここぞとばかりに観ちゃいましたね

どれもよかったですが

中でもズバ抜けて面白かったのが

奇妙なタイトルのこれ

↓↓↓

blog_import_6442a3586e562.jpg

監督は『バベル』などで知られる

メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

『バードマン』というヒーロー映画で

一世を風靡した落ち目の俳優が

復活をかけてブロードウェイの舞台に挑む姿を描いたもので

今年のアカデミー作品賞はじめ4部門に輝いた話題作です

主演にマイケル・キートン

↓↓↓

blog_import_6442a35b02527.jpg

言わずと知れた本作は

かつて『バットマン』を演じたキートン自身をパロっていて

キートンの実際の俳優としての再起

という意味合いも同時に含んでいます

ゆえにそこらへんの

彼のただならぬ気迫が妙にリアルに感じられ

それでいて本作のトーンは

あくまでブラックなユーモアに満ち満ちていて

う~ん

終始唸りっぱなしでしたね

特筆すべきは

全編ワンカットで撮ってるかのような

その特殊な撮影手法です

場面が切り替わったりすることがなく

カメラは舞台となる楽屋を覗き見るかのように

文字通りブロードウェイの舞台裏に

グイグイと容赦なく入っていき

俳優たちの生の表情を

臨場感たっぷりに捉えます

↓↓↓

blog_import_6442a35dd4e3e.jpg

かつての栄光よ何処へ

本作は失意の境遇に対する

フラストレーションが募る一方の

主人公の内面妄想、願望が

現実との境目なくそのまま可視化されます

ガルシア・マルケスをはじめとする

ラテンアメリカ特有の

マジック・リアリズムの伝統を

このメキシコのイニャリトゥ監督も

しっかりと踏襲していて

思わずニヤリ

(へっ)

とにかく意表を突いたオープニングから

なんだなんだこれは

と最初はかなりの戸惑いを覚えますが

その途切れることのないカメラワークと

テンポのいいセリフまわしで

あれよあれよと

その現実とも幻想ともつかない

奇妙な世界に引きこまれること必至

つまりは

こう

完璧に計算され作り込まれた

いわば即興演出

なんですよね

即興と完璧に計算

ってまさに相矛盾する話ですが

ここが監督の狙い

俳優たちの演技も

突発的に起こるハプニングも

全ては周到に練られた演出

それをあたかも即興風に撮っているんですよね

なんてったって

唐突に響くドラムの音がグッド

まさに即興のジャズのよう

同時にシュールな映像に対する

効果音的なアクセントの側面も担っています

またここが面白いのですが

復活を期すはずの劇中の主人公

さらにはその役に

実人生を重ね合わせたキートンが

やっぱりうだつが上がらないところ

気迫はどうにも空回り

そこらへんのキートンのイケてないところも

実は監督のしたたかな演出によるところ大で

共演のエドワード・ノートンに

見事に喰われる様が

とにかくおかしい

↓↓↓

blog_import_6442a3606b4c2.jpg

相変わらずノートンはうまいですね

あり得ないシチュエーションを

それいかにもあるある

的なリアルさで演じてみせます

自身の渾身の舞台でも

ノートンに場をさらわれ

そうして次第に焦燥感に苛まれ

追い詰められた主人公がとった行動とは

恥もプライドもかなぐり捨てた

マイケル・キートンの役者魂

最高です

↓↓↓

blog_import_6442a362d74dd.jpg

本作では

映画における商業面と芸術面の葛藤

あるいは映画と演劇の立ち位置などの考察も

少なからず盛り込まれていて

そうした役者にとっての積年の問いに対する

ある種の答え

そのアナーキーなまでに破壊的な結末が

本作の奇妙なサブタイトルの意味を示唆していると

僕は捉えています

というわけで

映画はストーリーではなく発想、アイデア

何より視点の新しさであるという

本作はまさにその好例

オススメです

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。