映画『花様年華』

映画評です

2000年製作

香港のウォン・カーウァイ(=王家衛)監督の

『花様年華』

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1960年代の香港

アパートの隣人同士の男と女

それぞれの妻と夫が不倫関係にあると気づいた二人は

次第に親密になり

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ひしめく狭い住居内

麻雀に興じる人々の熱い人いきれと

立ち昇るタバコの煙

無造作に回る天井の扇風機

そんなアジアのせわしない雑然の上に彩られる

モダンなインテリアや

モリス調の草花模様の柄でしつらえられた

部屋のクロスやカーテン

ラジオから途切れることなく流れる

懐メロや時にラテン調の洋楽

東洋と西洋が融合した

イギリス統治下の香港に宿る

このノスタルジックで

ジメジメと陰にこもったような倦怠ムードの中

淡々と進行する大人のやりとり

それにしても

よく雨が降ります

濡れた路地で会話を交わす男と女

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男に

トニー・レオン

スーツに身を固めた

ジャーナリストとしての知的で繊細な風情ながら

想いを寄せる人妻にいまいち迫りきれない

そんなどこか優柔不断で

しかし色気のある優男ぶりを見事に体現

ネクタイの柄がとにかく渋い

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対する女に

マギー・チャン

不確かな日常と孤独な内面がにじむ

毅然とした表情と佇まい

生活感漂う中での粋

何よりひと際映える

艶かしいまでのチャイナドレスに

女としての矜持を見ます

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長い首に

豹のようにしなやかな肢体

立ち姿の美しさに

思わずため息がもれます

この人は横顔の方が断然いいですね

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それぞれの妻と夫の不倫に悩む中

周囲の目を気にしつつ

互いに惹かれ合う二人ですが

う~ん

なかなかにして距離が縮まりません

慎ましさが損なわれることなく持続します

二人が食事をするシーンが

これがなんとも

下手な妄想を掻き立てるんですよね

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ふと

視線の映画

でもあります

クリストファー・ドイルの撮影による

なめるようなカメラワークがとにかく秀逸

事を起こせない男

待ちくたびれる女

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うっとりとした陶酔

男と女双方による想像の視覚化

思わせぶりなスローモーション

ウォン・カーウァイは

そのあざといまでのもったいぶった演出が

どうも鼻について

僕はあまり好きじゃなかったのですが

正直

本作はいい

とにかく全編

60年代香港の

レトロで退廃的なムードが終始保たれています

赤みがかった室内

抑制が生む官能

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う~ん

どこまでもこの

高ぶる欲望が

暴発する寸前の

節度がいい

果たして二人は

一線を越えたのか

越えなかったのか

ラジオから流れる

「花のごとき歳月」

あの時

ほんの少しの勇気があれば

失った時は

もう

二度と帰らない

というわけで

いやあ

これぞまさに大人の映画

夜一人まったりと観たい一本

オススメです

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