映画『陽のあたる場所』
先日TV放映されたので久々に鑑賞
いやあ
何度観ても見応え十分ですね
1951年のアメリカ映画
『陽のあたる場所』
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監督は名匠、ジョージ・スティーヴンス(1904-1975)
主演はエリザベス・テイラーと
そして
数々の悲劇に彩られた伝説の俳優
モンゴメリー・クリフト(1920-1966)
=通称モンティ
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モンティは
戦後のアメリカ映画界において
旧世代に代表される規制の価値観
=強くて逞しい男性像
とは明らかに異質な
従来の枠に収まらないがゆえの
孤独や疎外感を体現する
新たなタイプの男性像を世に提示しました
彼のすぐ後にマーロン・ブランドやジェームズ・ディーン、ポール・ニューマンらが続々登場し
役になりきるメソッド演技が花盛りとなるのですが
モンティはそうした新世代のまさにはしりでした
そんな彼の繊細でナイーブな異端児のイメージを決定づけたのが
本作『陽のあたる場所』と言われています
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…
貧乏な家庭育ちのジョージ(モンティ)は
叔父の会社で働くことになり
同じ職場のアリス(シェリー・ウィンタース)と付き合い始める
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そんなある日
社交界の花アンジェラ(エリザベス・テイラー)と出会い
互いに惹かれ合った2人は
たちまち親密な間柄となる
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そうした中
交際相手のアリスが妊娠したことで
ジョージは結婚を求められるようになる
2人の女性との間で揺れ動きながらも
日に日に
アンジェラへの思いが増す一方のジョージは
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次第にアリスのことを
疎ましく感じるようになり
彼女を殺害する計画を思いつく…
2人で湖にボートで出かけ
事故と見せかけて
溺れさせようとするジョージだったが
アリスの純粋でひたむきな思いに打たれて我にかえり
恐ろしい考えを抱いてしまった自分を恥じる
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しかし終始強ばった表情で
様子のおかしいジョージを見て
その本心を感じとったアリスが
思わず立ち上がった際に
ボートが転覆して
アリスはあえなく溺死
ジョージはひとり岸に泳ぎつく
やがてジョージは逮捕され
アリス殺害の罪で起訴される
裁判でジョージは
殺意のあったことを認めたが犯行を否定
だが争点は
なぜアリスを助けなかったのか?
という一点に集約され…
結局
陪審員は彼を有罪として
死刑が宣告される…
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ふぅ
貧しい家柄ゆえの野心家ジョージが
アンジェラとの愛にのめり込む過程において
次第に芽生えるアリスへの殺意
ボート上で見せた
その盲目的で思いつめたような
危機迫る表情…
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その真意は
アンジェラを象徴とする
“陽のあたる場所”への
抑えがたい憧れ、渇望
アリスが現実的な話をすればするほど
自身の思い描いた理想が
どうしようもなく頭をもたげてしまう
そうして理想と現実
もっと言えば
愛と殺意の狭間を
振り子のように行ったり来たりする…
このジョージの内面の葛藤の
最大の要因は
あまりにもアンジェラが魅力的だということ
アンジェラの美しさ
その高嶺の花ぶりが
そのまま階級の壁の高さを表しているという
これ事実の反映で
ジョージがアリスを助けなかったのは
アンジェラ=陽のあたる場所への思いが高じたがゆえの
確信犯的な
いわば見殺しということになりましょうか
かくして垢抜けない内気な青年が
理想の夢を追いかけるも
いつからか綻びが生じ
結果
破滅の道へと転げ落ちていく悲劇…
よくよく本作は
好景気に沸く戦後アメリカの
影の側面を映し出した
残酷な現実のメタファーといえましょうか
乱暴な言い方かもしれませんが
アンジェラという夢を追い求めた代償が
死刑判決だったという構図
それほどまでに階級間の溝は埋め難く
ジョージには不釣り合いだった
か
もしくはアンジェラがよほど魅力的で
つまるところ
本質的なファムファタールだったという話…
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とまあ
あらためて
スティーヴンス監督の冴え渡る演出に脱帽ですね
上流階級のアンジェラと庶民のアリスの対照的な描き方
何より2人の狭間で絶えず揺れ動くジョージの姿を通して
そこらへんの社会的背景や内実が
リアルに表現されています
そしてつくづく
圧巻は
ジョージのその困惑の極みぶりです
妊娠させてしまったアリスへの同情心
いわば良心の呵責を禁じ得ない
善人としての側面
はたまた
アリスに対する責任からつい逃れようとする
男としての不誠実さや
アンジェラに誘われるがまま
行きあたりばったりの行動をとってしまう優柔不断ぶり…
さらには警察に逮捕されるまでの間の
動揺、焦燥感…
それらが混在し
終始クヨクヨと思い悩み
ほとほと憔悴しきった様
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自らが招いた混乱
直面する問題の深刻さに囚われた男の
まこと複雑な内面が
なんとまあ
的確に表現されていることでしょうか
モンティのあまりにも端正な容姿と相まって
またおそらくは
彼の生真面目でストイックなパーソナリティまでも包含した
その人物像が
本作のスリリングな行方を通して
少なからぬ衝撃と確かな説得力を
観る者にもたらしています
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いやあ
まさしく緻密な心理描写による
サスペンスの真骨頂ここにありですね
ついつい観入ってしまいました
というわけで
あらためて
本作『陽のあたる場所』は
ラブストーリーの傑作であると同時に
稀に見る濃密な人間ドラマの力作です
と
次回は
その後のモンティが辿った
波乱の人生の一端をご紹介したいと思います
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