映画『それから』
男と女の
たわいもない日常
さりげないようで
どこか不自然なやりとり
違和感のある展開
ふと
辻褄が
合ってるような
合ってないような…
2017年の韓国映画
『それから』
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監督、脚本は
韓国が誇る異才ホン・サンス(1960-)
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う〜ん
不思議な映画です
著名な評論家のボンワンは
最近、妻に浮気を疑われている
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彼は小さな出版社を経営しているのだか
たまたまアルムという小説家志望の女性が初めて出社した日に
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突然、妻が現れて
アルムを夫の愛人だと決めつけ罵倒する
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その夜、ボンワンの本当の愛人である前任者が姿を見せ
話は思わぬ方向へと発展していく…
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延々ダラダラと繰り広げられる
男と女の不毛な痴話ばなし
よくよく何の生産性もない会話
しかし観ているうちに
スルメのようにだんだんと味わいが増してきて
思わず話に惹きこまれてしまいます
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と
物語自体に重きが置かれているわけではない
中身はむしろ空っぽ
物語そのものではなく
物語を取り巻く構造、形式、さらにはスタイルの面白さに
本作の魅力はあります
これは技巧とかでは決してない
遊び心とでも言いましょうか
唐突に切り替わる場面
自由に行ったり来たりする過去と現在
あるいは
現実と虚構の境界線すらどこか曖昧な中で
パズルのように人物を入れ替え
過去と現在の自分そのものを組み替え
そうしてやがて全体像を浮き彫りにさせる
と
あらためて
本作で構築された
その世界観とは
一体?
アルムとボンワンとの食事の席での
屁理屈めいた対話の場面で
アルムは
自分が信じているものについて言及
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いわく
「自分は主人ではなく、主人公でもない」
「いつ死んでも大丈夫」
「世界はなにもかも美しい」
と…
ふと
劇中の彼女は
どこか一歩引いた立ち位置で
いわば語り部的な存在…
よくよく想像力を巡らせると
本作における
出版社というミニマムな小宇宙で
同じ場所、違う人物によるシチュエーションを
少しずつズラして
繰り返される
男と女の
変奏曲…
う〜ん
これは
もしかしたら
アルムが長年書き続けて
いまだ目が出ないでいるという
小説(…それも習作レベル)の視覚化
さらには
彼女が信じているという
オールOKを具現化した世界
とは言えないでしょうか⁈
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ハハハ
考えすぎかな…
まあ総じて
トータルの印象は
男と女の
どこか奇妙な生き物としての
ある種、得体の知れなさ
といったところでして
ホン・サンス作品共通の
グダグダにして愛すべき大人たちによって繰り広げられる
知的なゲームに何ら変わりありませんがね
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それはそうと
実生活においても恋人関係にある
ホン監督のミューズ、キム・ミニがなんとも魅力的で
モノクロの静謐な世界で
ひときわ不思議な存在感を醸し出しています
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またタイトルの『それから』は
夏目漱石の同名の小説へのオマージュとなっていまして
本作のラストで
ボンワンが漱石の『それから』の韓国語版を
アルムにプレゼントするシーンがあります
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…が
そういえば劇中で
小説を書いているアルムは
タイトルをつけるのが苦手で
タイトルはそう重要ではないと
度々語っていましたっけ
本作のタイトルも
ラストで漱石の本が出てきて
まるで無造作に
それをそのままタイトルにしたような
そんな軽妙さを観る者に与えています
なるほど
なんだかいろんな観点で絡み合っていて
重層的な構造を有しているなぁ
観終わったあとも
あの場面やセリフはどこと結びついているとか
あれこれと頭に思い浮かぶ始末でしたね
いやあ
面白いなぁ
というわけで
ホン・サンスの特異なワールド炸裂な一本
ですが
まあ僕みたいに
あまり深読みせずに
サクッと観た方が単純に楽しめますかね
いずれにしてもオススメです
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