映画『国宝』

待望の鑑賞

ただいま絶賛上映中です

興行収入が100億円を突破する快挙を成し遂げ

歴代記録に迫る勢いですね

2025年製作の日本映画

『国宝』

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監督は在日3世の俊英

李相日(1974-)

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作家・吉田修一が

自身3年の歳月をかけて

歌舞伎の楽屋で過ごした経験を基に

芸の道に身を捧げた

ある歌舞伎役者の壮大な一代記を

フィクションとして描いた同名小説の映画化です

歌舞伎という特殊な世界で

繰り広げられる濃密なドラマ

主演の吉沢亮、横浜流星をはじめ

役者たちの渾身の演技に

終始圧倒された3時間でした

任侠の家に生まれながら

女形としての才能を見出され

上方歌舞伎の当主・花井半二郎に引き取られた喜久雄は

花井家の御曹司、俊介とともに

日々稽古に明け暮れ

切磋琢磨しながら芸を磨いていき

やがて2人はコンビとして華々しくデビューし

歌舞伎の花道へと駆け上がっていく

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…が

ある日、当主である半二郎が事故に遭い

メインの演目である「曽根崎心中」のお初の代役を立てなければならなくなる

そこで半二郎が代役に選んだのは

跡取り息子の俊介ではなく

部屋子の喜久雄の方だった

半ニ郎は血筋に関係なく

純粋に芸に秀でている方を選んだのだ

そうして喜久雄は

半二郎の期待に応え

迫真の演技で見事代役を務め

一方の俊介は

喜久雄舞台に圧倒され

途中いたたまれなくなってその場を立ち去り

以来10年もの間、家を離れてしまう

明暗が分かれたかの如き

対照的な道を歩む二人だが

血筋と芸道を巡る

運命の糸はもつれにもつれ

華やかな舞台と裏腹の

試練と苦難の波が

二人を容赦なく呑み込んでいき

そして…

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つくづく

厳格な縦割り組織のあり方

血筋、家柄、実力による上下関係の徹底

厳格なしきたり、礼儀作法

厳しい稽古

などなど

歌舞伎に限らずですが

芸事の世界って

ある意味

ヤクザの世界と同じ

まあ堅気ではないですね

そうした

特殊な環境下で創り出される

歌舞伎の妖しくも美しい世界観

禍々しくも華美な演出

鮮やかな色彩による美術や衣装

抑揚や緩急が織り混ざった中で

表現される様式美の粋…

あらためて

その特異さに目を奪われますね

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主演の吉沢亮と横浜流星は

クランクインのおよそ1年半前から

実際に歌舞伎の稽古に励んだそうで

いやあ

二人とも素晴らしかったですね

横浜流星は

以前から観て知っていましたが

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吉沢亮は

今回初めて観て

ちょっと感心してしまいました

いやあ

彼はいい俳優ですね

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惚れ惚れする美しさ

遠くを見通すような

澄んだ

それでいて冷徹な視線

無表情ながら

その実、沸るような感情が見え隠れする

そんなある種の両義性を

終始たたえています

これはまさに

女形としての生き様の体現だなと実感

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ふと

本作における

妖艶な女形の演技

特には演じる吉沢亮の

物腰と立ち居振る舞いを観ていて

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五代目 坂東玉三郎(1950-)だと

思い至りました

なるほど

女形の人間国宝である玉三郎が

身にまとう洗練

精神性こそが

本作の原型、モデルなんですね

つくづく

女形の苦悩と悲哀

演者たちに及ぼす精神的身体的負担

劇中、喜久雄が

「歌舞伎が上手くなれば他のものは差し出す」

と語るシーンがありますが

図らずもそれが現実となる過酷な運命を

つまりは

芸に生きるということの業の深さ

いわば代償を

本作は如実に映し出しています

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本作の前半は

吉沢亮演じる喜久雄が

横浜流星演じる俊介よりも

芸の才が優れている

と観ている側がわかるような

繊細な演出上の解釈が求められるわけですが

そこらへんの差は

観ていていまいち判別しづらく

厚化粧を施した二人の

目のインパクトなどで

技量の違いを表したのかなと思いましたが

その後、様々な紆余曲折を経て

二人の力が拮抗してくる後半の

特には「曽根崎心中」で見せた

俊介の鬼気迫る演技は

これはちょっと圧巻で

喜久雄を凌駕する迫力に満ちていましたね

糖尿病で足を失い満身創痍の彼が

最期に見せた大舞台

アップで捉えた表情

感情がたぎった生々しい姿には

終始圧倒されました

横浜流星が魂の熱演を見せましたね

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この舞台を通して

俊介と喜久雄が

幼少時より競い合ってきた過程で生じた

血と芸にまつわる

様々な確執、わだかまりは

もはや融解して

そうした経験すべてが

芸へと昇華されたと言えましょうか

そして

俊介との深い縁と絆、別離を経て

さらに年月が経ち現在へと至り

自身の出自やスキャンダルの声も途絶えて

晴れて人間国宝となる喜久雄

そんな彼が

本作のクライマックスで披露する

渾身の「鷺娘」

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まさに

生を燃やす

命を燃やす

集大成となる熱演です

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演出においては

アップの表情を捉えたり

途中、効果音を入れたり

音楽を挿入したり

いろんなアングルによるカット割りによって

リアルな臨場感を生み出し

実際の歌舞伎鑑賞時の視点とはまた違った

映画的高揚をもたらす

圧巻の舞台を創出しています

そんなこんな

ふぅ

なんとまあ

波瀾万丈なストーリー展開でしょうか

正直、話の起伏が激しくて

ちょっと忙し過ぎた感は否めませんが

それにしても

大変な労作ですね

主演二人を中心に

俳優たちがみんな素晴らしかったのですが

中でも劇中

人間国宝を演じた田中泯が出色で

ひと目でもう

すごい存在感でしたね

舞踊家である田中が

歌舞伎を演じるということも

ちょっと面白く

本質的には共通した身振りなんでしょうか

そして

李相日監督の

今作にかける想い

力の入り様はかなり前のめりでしたね

よくよく

歌舞伎って日本の伝統芸能ですが

元は周縁者の世界観で

どこまでも泥臭くてわい雑な

庶民の捌け口として人気を博してきたわけで

近現代に移行する過程で薄れてしまった

そうした風情やあり方が

在日3世である李監督の心情、スタンスに

どこか共鳴する部分があったのかなと

個人的に推察するところです

って

いやあ

話が尽きませんね

というわけで

『国宝』

これは見応え満点

日本映画の総力を結集した

近年稀に見る力作

今更ながら必見です

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