ヒッチコック/トリュフォー『映画術』
ヒッチコック/トリュフォー
『映画術』
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今更ながらオススメの本です
『サイコ』『めまい』『鳥』など
映画史に燦然と輝く名作は数知れず
とぼけた表情とまんまるの体躯が特徴の
ご存じ
“サスペンスの神様”
アルフレッド・ヒッチコック(1899-1980)
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そしてもう一人
『大人はわかってくれない』『突然炎のごとく』など
フランス・ヌーヴェルヴァーグを代表する映画作家
フランソワ・トリュフォー(1932-1984)
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本書は
映画評論家の肩書きを持つトリュフォーが
ヒッチコックへのロング・インタビューを敢行し
ヒッチコック自身が
自らその膨大な作品群を
惜しげもなく詳細に解説
520枚にも及ぶ写真とともに
丹念にまとめ上げた貴重な本です
いやあ
本書はまさに
映画の教科書と呼ぶにふさわしい一冊
って
なにしろ
聞き手のトリュフォーがすごいんです
自称“ヒッチコック・マニア”を標榜するほど
敬愛してやまないという
ヒッチコックの全作品を
事前にかなり分析研究したのでしょう
自らも映画監督だけあって
玄人らしく
相当にマニアックな質問を
バンバン浴びせます
また対するヒッチコックも
トリュフォーの鋭く的確な質問に呼応し
粋に感じるかのように
まあ気持ちよく
ペラペラと語り尽くすわけです
そんなクリエイター2人が
まさに対話を通して
シンクロし
共鳴し合い
やがて深い信頼関係で結ばれていく様子が
本文の中から
如実にうかがい知ることができて
いやあ
読んでいるこっちも
思わずニヤリとしちゃいます
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演出や脚本
俳優のキャスティングや演技指導
照明、小道具、編集などなどの
映画のテクニック論もさることながら
映像表現の意図や根拠
創作上の秘密までも
余すことなく明らかにされていて
う~ん
読んでいてホント心地よく面白い
いろいろな意味で勉強になります
と
本書の中で
ヒッチコックが
サスペンスの神髄について言及している部分が
ことのほか有名ですね
ここでは
“サスペンス”と“サプライズ”の違い
について
とてもわかりやすく述べています
ちょっと長いですが
以下、本書より引用
…
「いま、わたしたちがこうやって話し合っているテーブルの下に
時限爆弾が仕掛けられていたとしよう。
しかし観客もわたしたちもそのことを知らない。
と、突然、ドカーンと爆弾が爆発する。
観客は不意をつかれてびっくりする。
これがサプライズ(不意打ち=びっくり仕掛け)だ。
サプライズのまえには
なんのおもしろみもない平凡なシーンが描かれただけだ。
ではサスペンスが生まれるシチュエーションはどんなものか。
観客はまずテーブルの下に
爆弾がアナーキストかだれかに仕掛けられたことを知っている。
爆弾は午後1時には爆発する
そして今は1時15分前であることを観客は知らされている。
(この部屋のセットには柱時計がある)
これだけの設定でまえと同じような
つまらないふたりの会話がたちまち生きてくる。
なぜなら観客が
完全にこのシーンに参加してしまうからだ。
スクリーンのなかの人物たちに向かって
『そんなばかな話をのんびりしているときじゃないぞ!
テーブルの下には爆弾が仕掛けられているんだぞ!
もうすぐ爆発するぞ!』
と言ってやりたくなるからだ。
最初の場合は
爆発とともに
わずか15秒間のサプライズ(不意打ち=びっくり仕掛け)を
観客に与えるだけだが
あとの場合は
15分間のサスペンスを
観客にもたらすことになるわけだ。
つまり結論としては
どんなときでもできるだけ観客には
状況を知らせるべきだということだ。
サプライズをひねって用いる場合
つまり思いがけない結末が
話の頂点になっている場合をのぞけば
観客にはなるべく事実を知らせておくほうが
サスペンスを高めるのだよ。」
…
う~ん
いかがですか
情報によって
一瞬で映っている世界が違って見えるという
これぞまさしく
『7つの習慣』で言う
“パラダイムの転換”の好例ですね
というわけで
いやあ
この稀代のクリエイター2人による
映画表現の奥深さ
その素晴らしい創造の軌跡が紡がれた
必読の書
是非オススメです
って
まあそうは言いましても
本書の前に
やはりヒッチコックの映画は
数本は観ておかないといかんですがね
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