カポーティ『夜の樹』
孤独な旅路のお供に
ふと
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カポーティの短編集
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『夜の樹』
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表題ではなく
本の中の1編『ミリアム』より
本文を一部抜粋
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…
ミセス・ミラーはそっと自分の部屋に入った。
部屋の真中に歩いて行き、じっと立っていた。
たしかに部屋の中は何も変わっていない。
バラ、ケーキ、さくらんぼ、みんなもとのところにある。
しかし、部屋は空っぽの雰囲気があった。
家具や見慣れたものがなくなっても、これほど空っぽな感じはしないだろう。
あたりは葬儀屋の部屋のように生気がなく、こわばっている。
目の前のソファがいつもと違ってよそよそしく見える。
ソファには誰も座っていないのに、ミリアムが座っているときよりも、人の心を刺しつらぬく、恐ろしいものに見える。
彼女は箱を置いたとおぼしき場所をじっと見つめた。
一瞬、クッションが重苦しく回転したように見えた。
彼女は窓越しに外を見た。
いつもと同じように川が見える。
ちゃんと雪が降っている…
しかし、だからといって何も起きていないといえるだろうか。
げんに、さっきまでミリアムがそこにいたのに…
いま、彼女はどこにいるのだろう?
どこに
どこに?
…
おまけ
作者のトルーマン・カポーティ(1924-1984)
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