映画『サタンタンゴ』
7時間18分の陶酔…
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1994年製作
ハンガリー、ドイツ、スイス合作の
『サタンタンゴ』
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公式サイトは→こちら
いやあ
なんだかんだ
僕の中では今年最大の映画トピックですね
4Kデジタル・レストア版として25年ぶりに待望のリバイバル上映を果たした
まさに伝説の映画です
監督はハンガリーが世界に誇る、知る人ぞ知る巨匠
タル・ベーラ(1955〜)
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う〜ん
7時間18分だなんて
そんな長い映画、いまだかつて観たことがありません
恐ろしい長尺にもかかわらず
カット数は全編でわずか約150カット
放たれた牛たちが辺りをうろつく
冒頭のシーンから始まって
映画は
荒廃したハンガリーの
とある寒村を
悪魔的なまでの長回しで凝視し続けます
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激しく降りしきる雨
泥にまみれた地
凄まじい勢いで吹きつける暴風
圧倒的な自然の猛威の前になすすべもなく
心身ともに打ちのめされる村人たち
寒さ、飢え…
次第に人々の間に芽生える猜疑心
厳しい現実から目を背けるように
街の唯一の酒場で、われを忘れて
夜更けまで延々とタンゴを踊り続ける人々
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虚無に覆われた終末論的な様相
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と
その光景を外からじっと眺める少女
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そして酒を求めて
夜の泥道を重い足取りでひた進む医師の男が
酒場の様子を眺める少女にふいに出くわす…
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映画は
同じ出来事を複眼的な視点で何度も描く
円環構造を有しながら
時間の概念を無に帰する
極端なまでの長回しで
観る者を闇に覆われた異世界へと誘います
この容易にカットを切らない長回しと複数視点が
本作を長尺たらしめる所以ですね
と
ある日突然
1年前に死んだはずのイリミアーシュが村に帰ってくる
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果たして彼の帰還は
人々に何をもたらすのだろうか?
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どこにも救いを見出すことができない中で
にっちもさっちも行かなくなり
やがて藁をもすがるように
言葉巧みな一人の男に人生を託してしまう
(党のスパイである)イリミアーシュに有り金をすべて預け
自分たちの農園を持つことを夢見て村を出る
愚かで哀しき人々の様
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やがて彼らを待ち受ける苦難
立ち込める絶望
全編を覆うペシミズム
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ふと
延々映し出される沈鬱なモノクロ映像を
ただじっと観続ける
長くゆっくりとしたテンポで進むその悠久のときを
観ている僕らも共に過ごすうちに
次第に画面と溶け合い、融合していく
この奇妙な感覚
これは、体感したわけではありませんが
どこかランナーズハイにも似た心地でしょうか
長く苦しい道のりを
地道にコツコツと歩み続けた果てに抱く心境
いや
むしろ“先”ではなく“今”
結果ではなくプロセスそのもの
1秒間24コマのフィルムの規則正しい反復動作の只中に
さらには映画館の深い暗闇の淵に
自ずと埋没していく恍惚
にわかに覚える陶酔の境地
つくづく
不思議な映画だ…
この長回しの魔力は
それこそあらゆる場面に及びます
歩く、踊る、酒を飲むなど、人々のミニマムな行為はもとより
大量のゴミや紙屑が強風で転がる道を2人が進むシーンや
無人の広場を馬の群れが駆け巡る幻想的なシーンなどなど
本作は気の遠くなるほど長いが
しかし美しく印象的なシーンで全編彩られています
そしてひときわ異彩を放つ少女の無垢な存在感
幼いながらもすべてを見通したかのような一途な眼差し
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いやあ
ワンシーン、ワンカットに宿る
この圧倒的なまでの強度
生々しい人間の営み
根源的な姿
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鳴り響く鐘の音が暗示する
まるでこの世の果てのような
黙示録的な世界観
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つくづく
なんとまあ重厚で本質的で
それでいて豊かな映画表現でしょうか
う〜ん
当分、悪夢から覚めそうにありませんね
タル・ベーラ恐るべし
というわけで
本作『サタンタンゴ』は
世界が驚嘆した
まこと稀有な傑作です
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