映画『永い言い訳』

最近すっかり

Amazonプライムづいている今日この頃

先日

なかなか見応えのある日本映画を鑑賞しました

『ゆれる』(2006)など

鋭い心理描写に定評がある

西川美和の2016年の監督、脚本作で

自身が書いた小説の映画化となる

『永い言い訳』

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人気作家の幸夫は

長年連れ添った美容師の妻を

突然のバス事故によって亡くしてしまう

しかし夫婦の間にすでに愛情はなく

実際、妻が事故死した夜

幸夫は不倫相手と密会中だった

妻の死を悲しむことができず

人前では悲しみに浸るふりをする幸夫

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そんな時、遺族の会合の場で

幸夫は同じ事故で亡くなった妻の親友の夫、大宮と出会う

幸夫と同じように

妻を亡くしたトラック運転手の大宮は

幼い2人の子どもを抱えたまま

妻の死を受け入れられず憔悴しきっていた

その様子を目にした幸夫は

大宮家へ通い

子供たちの面倒を見ることを申し出る

そうしてつかの間

大宮の子供たちとの

奇妙な共同生活が始まる

主演は本木雅弘

共演は深津絵里やミュージシャン兼俳優の竹原ピストルなど

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ふと

幸夫が大宮の子供たちの面倒を見ようと思った動機は何でしょう

妻への罪滅ぼし?

現実逃避?

作家としてのネタ集め

それとも単純に

困っている大宮を助けたいという一心からか?

おそらくは

それらが渾然一体となった末の行動でしょう

いずれにせよ映画は

幸夫と大宮の子供たち2人が過ごす

なかばドキュメンタリーを見ているような

リアルな生活模様に

いろんな大人の事情を凌駕するほどの

純度の高さを垣間見ます

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理屈っぽくて言い訳がましく

シニカルな性分の

本木演じる人気作家の幸夫と

対照的に

不器用ながら行動力に溢れ

素直でストレートな表現しかできない

竹原演じるガテン系の大宮くん

亡くなった妻を忘れられず

いつまでもクヨクヨと泣き崩れる

思い先行型の大宮くんの素の魅力を

あえて引き出すことによって

相対的に

幸夫の戸惑いや自己欺瞞

内心の本音すら

白日の下にさらされるに至る

この

容赦のない演出

つくづく

本木演じる幸夫を見ていて

カッコいいけど

ホントに嫌な奴だなぁ

思わされる場面が度々ですね

作家だけあって

やはりボキャブラリーが多いと言いますか

ねちねちと嫌みを言ったり

また畳みかけるように説き伏せたりと

まあ言われた方は

立つ瀬がなくなってしまいますよね

でもよくよくモックンて

実際ホントにこういう性格なのかも

って

思わせるほど

あまりにもピタリと役柄にハマっています

いやあ

西川監督の眼は確かですね

本木のある種

人間的に嫌な一面を()

見事に引き出すことに成功しています

感情の機微、わずかな表情の変化をも

捉えて離さない

繊細で丁寧な演出が

本作にいっそうの深みをもたらしています

あらためてこの映画は

幸夫が辿る

亡き妻への贖罪の道程

永い言い訳という名の

心の旅路

自己探求への旅

いわば罪と罰の物語です

でも同時に

それを正面から受け止めきれない

弱い自分がいる

さらには

身近な誰からも愛されていないことの実感

それに気づいたときの

ある種の絶望

そんな中で時折こぼす

自虐的で

生々しい本音の吐露

自己嫌悪

ダメな自分自身を

どこまでも引きずりながら

それでも生きていかなくてはならない

そんな苦悩

皮肉まじりに滲ませる様がリアルです

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そして言葉の殻に閉じこもりながら

日々を

その場を

やり過ごす

狡猾で臆病な自分

そのネガティブなあり様を

まんま生きることに伴う

精神的なしんどさ

反動としての冷淡さ、客観性

何より

妥協のない正直さに

作家という仕事を生業とする人間の

哀しいまでの性

いわば

本質を垣間見るのです

というわけで

西川監督によって

新たな一面を引き出された本木の

その演技に取り組む真摯な姿勢に

つい思わず観入ってしまった

人間ドラマの佳作

いやあ

見どころ十分でしたね

夜ひとり

じっくりと鑑賞してほしい一本です

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