映画『ありふれた事件』

僕は20代の頃に約4年ほど

仕事の関係で都内に住んでいました

当時住んでいた場所は新宿区の中井で

まあ貧乏なアパート暮らしでしたね

部屋は2階の6畳一間で

お風呂がなく

近くの銭湯に行っていました

また当時は部屋にエアコンがなく

夏はいつも一晩中

入口のドアとベランダの窓を開けっぱなしにして

風通しを良くして寝ていたのですが

真隣にあった「何でも屋」という中古屋さんの

2階に住んでいた中東人たちが

しょっちゅう音楽を鳴らしながら

夜中までガヤガヤやっていて

それはそれで面白い光景ではありましたが

なんだかうるさくて

何より夏は暑くてよう眠れないので

一人でよく新宿や渋谷に出かけていき

夜の街をぶらついたものです

そうして金もないし

よく一人で映画を観ましたね

ということで

前置きが長くなりましたが

そんな時分に

ふと観た一本です

1994年公開

ベルギーからやってきた奇妙な映画

『ありふれた事件』

↓↓↓

blog_import_6442fd6c8850c.jpg

平然と殺人や強盗を繰り返すひとりの男の日常を

彼を主人公にドキュメンタリーを製作している撮影班が追いかける

というユニークな設定の本作は

↓↓↓

blog_import_6442fd6cbc576.jpg

監督役のレミー・ベルヴォー

カメラマン役のアンドレ・ボンゼル

主演のブノワ・ポールヴールド

3人を軸にしたアート映画集団が

共同で監督・製作・脚本・出演を手がけて

完成させた野心作です

↓↓↓

blog_import_6442fd6d036d0.jpg

いやあ

この映画、ぶっ飛んでます

初めて観た時はとにかく衝撃でしたね

無邪気に

淡々と

何のためらいもなく

殺戮を繰り返す男

↓↓↓

blog_import_6442fd6d666f1.jpg

その行為は

食べて寝ることと同じくらい日常的で

どこまでも生活の一部として根づいている

その違和感のない様が

う〜ん

なんともショッキングで

考えてみれば不可思議で

ある種の錯覚

異化作用を観る者にもたらします

それはたぶんに

創り手たちによる映像のセンス

小気味よいテンポのカメラワーク

クールで鋭角的な構図など

モノクロによる鮮烈なショットの数々

↓↓↓

blog_import_6442fd6e9d07f.jpg

殺人者を演じたブノワの

飄々とした憎めないキャラ

↓↓↓

blog_import_6442fd6f0cec6.jpg

意表を突くストーリー展開

ドキュメンタリーを撮影するというシチュエーション設定の妙

それによって生まれる即興性やハプニング性

(…実際は周到な演出によるものでしょうが…)

などが絶妙に合わさってできた産物で

いやあ

これは面白い

ありえないということはわかっていながらも

目の前に映し出されるアブノーマルな世界が

あまりにリアルなために

少なからず抱く戸惑い

観る者の常識やモラルを揺さぶる

残酷極まりない凄惨な映像は

しかし

どこか

ブラックで

シュールで

時折、ある種の笑いを誘います

↓↓↓

blog_import_6442fd708f75d.jpg

う〜ん

そう考えますと

本作は明らかにシュルレアリスムの系譜

いや

今流行りのフェイク・ドキュメンタリーの類いでしょうかね

というわけで

発想次第で

いくらでもすごい映画が創れるという

本作はその

まさにお手本

オススメの異色作です

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。