映画『ベニスに死す』

なんとなく芸術づいている今日この頃

久々の映画評です

イタリアの巨匠

ルキノ・ヴィスコンティの代表作

1971年製作の

『ベニスに死す』

↓↓↓

IMG_8826.jpeg

いやあ

何を今さらって感じですよね

この映画とにかく大好きです

夏のベニス

療養のためここを訪れた

ドイツの老作曲家アッシェンバッハが

バカンスに来ていた少年タジオに心奪われ

終生追い求めていた理想の美を

彼に見出しつつも

この地に蔓延していたコレラに侵され

やがて死を迎える

言わずと知れた

ドイツの文豪トーマス・マンの同名小説の映画化です

何より

少年タジオを演じた当時15歳の

ビョルン・アンドレセンの

黄金色のまばゆい輝き

↓↓↓

IMG_8850.jpeg

ギリシャ神話と少女漫画を足したような

性差の別を超えた

まさに美の化身

↓↓↓

IMG_8832.jpeg

う~ん

同性愛者で知られたヴィスコンティは

アラン・ドロンやヘルムート・バーガーなど

多くの美男俳優を

こぞって自作に起用しましたが

このアンドレセンに至って

その嗜好は極まったと言えましょう

少年タジオを

理想の美への見果てぬ夢を

焦燥感に駆られながら追い求める

主人公アッシェンバッハとは

他でもないヴィスコンティ自身

↓↓↓

不明.jpg

少年タジオの美しさと対をなすように

醜く老いさらばえてゆく自分自身を

ダーク・ボガード演じる主人公に見立て

滅び行く者へのロマンチシズムと

冷徹なリアリズムの両極を

フィルムに刻みこみます

繊細極まりないダーク・ボガード

一世一代の名演です

コレラの蔓延と共に刻一刻と近づいてゆく

時代の暗い影と死の予感

そんな中で見出した一筋の光

少年タジオへの思いを募らせ

やがて死へと終息してゆく主人公の姿が

情緒豊かなベニスの街並みをバックに

そしてマーラーの交響曲第5番の

官能的な調べと共に

静かにしかし力強く表現されていきます

この明確なビジョン

厳格な美意識に裏打ちされた世界観

↓↓↓

不明_1.jpg

目を見張るべきは

美と醜の鮮烈なコントラスト

少年タジオが放つ

神々しいまでの光

アッシェンバッハの熱い視線に気づきながらも

誘惑とも挑発ともとれる

眼差しや笑みを浮かべるタジオ

↓↓↓

不明_2.jpg

う~ん

彼にはセリフも何も

演技すらも介在する余地はありませんね

また時代考証に基づいて忠実に再現された

衣装や小道具類

母親役のシルヴァーナ・マンガーノの品位と

優雅なふるまいも

タジオの美しさにいっそうの彩りを与えます

↓↓↓