映画『エレ二の旅』

2004年製作

ギリシャの巨匠

テオ・アンゲロプロス監督の

『エレニの旅』

↓↓↓

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う~ん

これはもしかしたら

アンゲロプロスの最高傑作かも知れません

もう素晴らしいの一語です

この映画は

難民としてロシアから故国に帰り着いてから

第二次大戦までのおよそ30年間を

エレニという一人の女性を通して

象徴的に描き切った

ギリシャ現代史の壮大なる寓話です

彼の名を一躍世界に知らしめた

『旅芸人の記録』や『狩人』など

政治や戦争に翻弄される民衆という

初期の傑作群に通じるテーマながら

それらを凌ぐほどの出来栄えです

アンゲロプロスといえば

何てったって

ワンシーンワンカットの

チョー長回しが有名ですが

今回は

冒頭の河岸に降り立ってから

集落の生活風景に続く長回しをはじめとして

CGを使わずに一体どうやって撮ったんだぁ

と唸ること必至です

↓↓↓

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アンゲロプロスの映画は

観賞中

思わずつい眠ってしまい

ハッと目を覚ましても

まだ同じシーン

というのがよくありますが

今回もまさにそのオンパレードです

(これ、あくまでほめ言葉です

くれぐれも誤解なきよう

そして独特のゆっくりとしたカメラワークと

監督好みの

曇天の張りつめた空気感が醸し出す

静謐極まりない世界が

物語の悲劇性と相まって

まこと絵画的な美しさをたたえています

↓↓↓

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先述しましたが

美しい映像に見とれて

つい眠ってしまい

ストーリーを見落としがちになりますので

やはりそこらへんは要注意ですね

(でもそれでいいんですがね

とはいえ

例えば『旅芸人』では

登場人物たちの民衆としての匿名性が強調されていましたが

今回の『エレ二』は

主人公はじめ

登場人物たちのキャラがしっかりと立っており

よりドラマ性が色濃く出ています

主人公のエレ二は

ほとんど最初から最後まで泣いています

ギリシャの悲痛な歴史を一身に背負っています

民衆は

政治や権力の前ではいつでも無力です

そうした弱い立場の人たちの唯一の愉しみが

音楽でしょうか

楽器を奏でるうちに

やがて人々が歌い踊るシーンに移行するなど

とても印象的な演出もあります

しかし映画は

エレ二という一人の女性と

彼女を取り巻く切ない状況を見つめながらも

決してセンチで染めず

全体のリズムやトーン、距離感は神話的で

また宗教画的なイマジネーションを喚起させる要素もあったりして

どこか

神の視座

とでも言えるような

超越的な位置を獲得しています

おっと

ちょっと小難しい書き方になってしまいましたが

この映画

まぎれもなく傑作です

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