映画『春夏秋冬そして春』

先日のNEWSより

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韓国の映画監督、キム・ギドクが1211(現地時間)、ラトビアで新型コロナウイルス感染症による合併症で死去したと、ラトビアやロシアメディア、韓国メディアが相次いで報じている。59歳だった。

同メディアによれば、キム監督は1120日からラトビアに入国。現地のホテルに滞在していたようだが、今月に入ってから新型コロナウイルス感染症の症状が出たため入院していたという。

う〜ん

突然の訃報にびっくりしました

ということで映画評

今回は

韓国の鬼才、キム・ギドク(1960-2020)

キワモノ揃いの監督作の中から

こちらをチョイス

2003年製作

韓国・ドイツ合作の

『春夏秋冬そして春』

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夢の中にいるような静謐な空間

霧に包まれた深い森

揺らめく湖面に

ひっそりと浮かぶ古寺

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この閉ざされた僧院を舞台に

一人の男の生の営みを

美しい四季の移ろいに重ねて

シンボリックに描き出した人間ドラマです

本作は季節ごとに

以下、5章のパートに分かれています

1.

老僧と共に暮らす幼子が

命の尊さを知る

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2.

成長した青年は

欲望に目覚め

僧院を出て行く

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3.

自分を裏切った妻を殺し

寺に逃げ込んだ男は

そこで老僧に

床一面に書かれた般若心経を彫るよう命じられ

怒りをぶつけるように無心に彫り続ける

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終えた後

刑事に引き渡される

老僧は死期を悟ったのか

目、口、耳に「閉」という文字の紙を貼り付け

焼身自殺を遂げる

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4.

刑期を終えた男は

無人の僧院に戻り

己の限界と向き合う日々を送る

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顔を隠した女が赤ん坊を置いてゆく

5.そしてまた春を迎える

幼い頃の自分そっくりの子が

また同じことを繰り返す

仏教において

克服すべき煩悩とされる三毒(=欲、怒り、愚かさ)

さらには輪廻転生

映画は

悠然とした時の移ろいの中で

僧である一人の男を中心に

人間の営み

業の深さ

その根源的な姿を

セリフをほぼ排し

表層的で即物的なショットを積み重ねながら

終始淡々と

観念的に映し出していきます

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何より

美しい四季折々の古寺を取り巻く湖畔の風景

数少ない登場人物たちによる感情の交感が

豊穣な世界観を醸成します

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終盤となる冬のパート

水墨画のように穏やかな雪景色

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男は仏像を携え

紐で括った石を引きずり

ひとり上半身裸で

雪に覆われた険しい山をひたすら登っていく

少年のころ動物に石を括って悪戯をした時と同じように

その試練を自らに課す

そうして山頂に到達

弥勒菩薩半跏思惟像が

お寺のある湖一帯を睥睨するように鎮座

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苦行への道のりにおいて

パンソリのような節回しによる

アリランの唄が響きわたる

いやあ

自ずと

深い精神性と共に

えも言われぬ高揚感と余韻を

観る者にもたらします

主人公の僧侶は

各パートごとに別の役者が演じていますが

冬の章はキム監督自ら

印象的な演技を披露しています

それと

なんと言いましても

撮影場所となった

慶尚北道チョンソン郡にある

「周王山国立公園」の

目を見張る美しさ

この素晴らしいロケーションなくして

本作は成り立ち得なかったでしょうね

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ところで

近年、キム監督は複数の女優からセクハラの告発を受け

韓国映画界にとどまることができず

隠遁生活を送っていたそうで

ラトビアへの移住もそうした経緯があってのことのようでした

いずれにせよ

監督のご冥福を祈ります

というわけで

鬼才、キム・ギドクの特異な世界観が結実した異色作

あらためて必見です

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