映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
画面に
何か異質な空気が漂っている
明らかに別の
確かな存在を感じさせる
それがゴーストということなんですが…
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先日、Amazonプライムで観ました
2017年のアメリカ映画
『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
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監督は新鋭、デヴィッド・ロウリー(1980-)
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う〜ん
才能あるなぁ
思わず感心しちゃいましたね
…
アメリカ、テキサス郊外
小さな一軒家に住む夫婦のCとMは幸せな日々を送っていたが
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ある日
夫Cが交通事故で不慮の死を遂げてしまう
妻Mは病院でCの死を確認し
遺体にシーツを被せその場を去るが
程なくして
死んだはずのCが
突如
シーツを被った状態で起き上がり
そのまま妻のいる自宅まで歩いて帰っていく…
幽霊となって部屋に佇む彼の姿は
Mには見えない
悲しみで気が動転し
貪るようにパイを食べる妻を
ただ静かに見守り続けるC
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しかし月日が経ったある日
Mは
人生をやり直そうと決心して
家を出て行ってしまう
霊として残されたCは
妻への未練を抱えたまま
それでも家にとどまり続け
そうして
ひとり悠久の時をさまよい始める…
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まずもって
ユニークなシチュエーション設定に面食らいます
いやはや
死んだはずの夫がシーツを被ったまま
突然起き上がったのにはびっくりしましたね
よくよく
このシーンなんかもそうですが
本作はとにかく
FIX(=固定)による長回しが多用されます
あるワンシーンを
不自然なくらい長い間
ジーッとカメラが回り続けると
観ているこっちは
自ずとその先に
何か予期せぬことが起こるんじゃないか
と想像したり
あるいは
映し出された映像に対して
違う意図を勘ぐったりします
と
それもそのはず
この映画は
幽霊の視点による現世
つまり
ゴーストから見た世界
を視覚化しているからです
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それはある意味
この世とあの世が“共生”した世界
その映し出された映像は
上述の長回しも手伝って
刻々とフィルムが回っている間は
時間の概念がおよそ希薄で
周囲が徐々に融け合っていくような
不思議な感覚と余韻に包まれます
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長い長い時を超えてさまよう霊
ゴーストは
過去、現在、未来を行き来するも
場所はあくまで
同じこの家(のある場所)に居続けます
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つくづく
本作はCGなどに頼らないアナログ仕様で
あくまでミニマムな演出や雰囲気描写によって
ゴーストを描いている点が
ことのほかユニークです
何より
頭からシーツをかぶって
目の部分だけ穴を開けた
シンプルな出立ちながら
しかしなんとも
不気味で異質な存在感を放つゴーストが出色です
どこか
アメリカの白人至上主義の白装束集団、KKKのようでもあるし
あるいは
まるで白いダースベイダーのようでもあって
ちょっと迫力あります
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しかし
このゴースト
奇異なビジュアルにもかかわらず
実際のところ観ていて全然怖くありません
孤独な様がどこか物悲しく
健気で切なくもあり
またある種のユーモアすら感じ
なんとも親近感を覚えたりもします
あらためて
シーツ姿の幽霊となった夫に
ケイシー・アフレック
これは難役でしたね
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そして妻に
ルーニー・マーラ
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会話(=セリフ)が大幅に排されるも
しかしそこに確かに存在する感情の交感
それは目線であったり
表情であったり
夫の作った音楽であったり
時と場所を共有することで生まれる
一体感であったりします
映画はゴーストが主人公だけあって
そこらへんの目に見えない部分を
とても丁寧に
じっくりとカメラを据えて描写しています
その目に見えない感性を
役者は
明確な形で示すことが求められるわけですが
いやあ
つくづく
ルーニー・マーラっていいですね
魅力的だなぁ
繊細で慎ましやかな風情の中にも
うちに秘めた激情
ひたむきな強さを
感情のかすかな機微を通して
しっかりと表現できる
自ずと観ている側の僕らとも
コミュニケーションを交わすことができる(…と錯覚させる)
なんともキャパシティの広い女優だな
と実感させられます
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また本作には
セリフが集約されるシーンが1場面だけあって
ひとりの人物によって
本作のテーマにも相通じる壮大な“うんちく”が
それこそ饒舌に語られます
面白いですね
とまあ
映画は
円環構造を有する時の流れの中で
連綿と続く
この小さな家にまつわる変遷を辿り
その行く末を見守りながら
ゴーストとしてさまよう男が
やがて成仏する様を
優しく穏やかに描出します
いやあ
なんとまあ
奇妙で美しい世界観でしょうか
観終わったあと
不思議と満たされた気持ちでいっぱいになります
というわけで
若き異才、デヴィッド・ロウリーの野心的な試みが
結実した佳作
是非ともオススメです
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