映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
ふと
僕はハッピー(エンド)な映画より
不幸な映画の方が
むしろ元気になることが多く
観た後に少なからずパワーをもらえる
そんな体験を何度もしていますかね
これはたとえば
思いっきり泣いて泣いて泣きまくって
結果スッキリする感覚に近いかな
まあ実際に泣かなくても
不幸を生きる主人公に自己投影し
擬似体験することによって
自ずと心が浄化される
そんなイメージです
おっと
もしかしたら原風景は
『フランダースの犬』かも⁈
ということで
今回は僕が過去に観た中で
今でも鮮明に脳裏に焼きついている
バッドエンドな映画をご紹介
2000年公開
デンマークの問題児
ラース・フォン・トリアー監督の
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
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いやはや
なんとまあ絶望的な映画でしょうか
主演はアイスランド出身の世界的歌手ビョーク
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舞台はアメリカの田舎町
チェコからの移民でシングルマザーのセルマは
徐々に視力が失われる遺伝性の病に冒されていた
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工場で働きながら
息子の手術費用をコツコツと貯めていた彼女は
よく大好きなミュージカルを空想したりして日々を過ごしていたが
ある時
思いもよらない災難に見舞われる…
セルマの身にふりかかる数々の受難
そのあまりに悲惨な末路に
自ずと宗教的な意味合いが重なります
揺れ動く手持ちカメラで捉えた
容赦のないリアルな肌合い
もうほぼドキュメンタリーですね
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そうした厳しい現実の中に時折挿入される
明るく華やかなミュージカルの幻想
現実逃避するように
空想の中で歌い踊るビョークの
どこまでも伸びていくパワフルな歌声には
う〜ん
つい魅了されずにはいられませんね
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最後まで救われることのない
シリアスなテーマと残酷な結末
そのおよそリアルでないシチュエーションを
まことリアルに描写することによる
ある種の錯覚
ザラついた映像から伝わる
肌寒いまでの空虚感と相反するように
早いカット割りで構成された
躍動的なミュージカルシーンに帯びる確かな熱
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いやあ
いまだかつて観たことのない不思議な世界観で
すっかり画面に魅入ってしまった次第です
と
本作は
公開からかれこれ20年も経つんですね
この映画を観た当時
僕は30歳そこそこでしたが
実はこの頃
体調を崩し
仕事を長期間休み(10ヶ月!)
私生活も破綻した状態でして
自宅療養という名目で
ひとり家の中で
悶々と過ごす日々を送っていました
まあ自分で言うのもなんですが
身も心も病んでいましたね…
本作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は
そんな荒んだ時分に観た1本でして
主人公が辿る悲惨な境遇と過酷な運命に
つい自分を重ね合わせてしまい
強い衝撃とともに
心かきむしられ
ほとほと疲れ果て…
そうして
えも言われぬ
確かな力を得たのです
ん
あれっ
と変な話ですが
まあそういうことなんですよね
つまりは不幸の中にどっぷりと埋没する
独りよがりで
自己満足で
自意識過剰な
カッコ悪い自分を
まんま自覚しながら
徹底的に陰にこもる…
感傷に浸る…
それこそ飽きるまでクヨクヨと思い悩む
するとやがて
現実に立ち向かっていこうとする力が
心の奥底から湧き上がってくるのです
まあ僕自身
最悪のコンディションの時に観たのが
これ幸いしたのでしょうか
あざとくもエグい表現を好むトリアーの映画は
観る人によって
しばしば激しい嫌悪感を伴ったりしますが
トラウマ必至だったかというと
僕の場合はむしろ逆で
観終わった後
妙に晴れ晴れとして
なんだか癒されたような
救われたような気分になりました
つくづくわれながら
強烈な映画体験だったんだろうなぁ
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あらためて映画というのは
ポジティブでハッピーなものより
負の空気感に覆われた
ネガティブで不幸な映画の方が断然面白く
エネルギーもはるかに強いと確信します
監督のラース・フォン・トリアーは
まさにネガティブの権化みたいな人で
ホント完全に振り切っていますね
というわけで
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
つくづく本作は
僕にとって決して忘れることのできない
特別な映画のひとつです
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