映画『時計じかけのオレンジ』

1971年製作

イギリス・アメリカ合作の

『時計じかけのオレンジ』

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監督・脚本・製作は

巨匠、スタンリー・キューブリック(1928-1999)

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1962年に発表された

アンソニー・バージェスの同名小説の映画化で

言わずと知れた問題作ですね

オープニング

鮮烈な原色をバックにしたタイトルロール

ドラッグ入りミルクを飲む主人公アレックスを捉えたアップから

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カメラがゆっくりゆっくりと

ズームアウトしていき

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縦長に伸びた

ポップでキッチュな

ミルクバーの異空間が現出

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シンメトリーの構図も手伝って

画面全体が

張り詰めた緊張感とともに

底冷えする退廃に染まります

近未来のロンドン

ベートーヴェンに心酔する悪童アレックスと

彼をリーダーとする4人組ドルーグ

街中のあちこちに出没しては

日夜

悪虐非道の限りを尽くしていた

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しかしアレックスは

仲間の裏切りによって警察に逮捕され

懲役14年の刑に処せられてしまう

服役して2年が経過した頃

アレックスは自ら志願して

新しい更正治療法の被験者となることと引き換えに

刑期短縮の機会を得る

って

この治療法「ルドヴィコ療法」は

強制的に目を見開かされたまま

残虐な映像を延々見せられることによって

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やがて一切の暴力行為に

生理的拒絶反応を引き起こすことを企図したもので

アレックスはこの映像を浴び続け

その上

治療中、映像に

ベートーヴェンの第九が流されたことで

以後、大好きな第九を聴くと

自動反射的に激しい拒絶反応を起こしてしまう

そうしてアレックスは

真人間となって更正

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晴れて出所し自宅に戻るのだが

しかし両親からは冷たくあしらわれ

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昔の仲間からはリンチを受ける始末

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満身創痍のアレックスは

一軒の屋敷に救いを求めるが

そこはかつて自分が襲った

作家の自宅だった

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ふぅ

それにしても本作が

かれこれ50年以上も前の映画だということに

今更ながら

驚かされますね

今観ても

観る者の度肝を抜く

強烈無比のインパクトです

ホントぶっ飛んでいますね

若くて大胆で残忍な

狂気の主人公アレックスを

マルコム・マクダウェルが怪演

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彼が心酔する

ベートーヴェンの交響曲が

耳鳴りを起こすように

絶えず鳴り響く中で

悪虐の限りを尽くす

アレックスとその仲間たち(=ドルーグ)の

カオスな様

“ナッドサット”と呼ばれる

意味不明なスラングを発しながら繰り返される

破壊的な行為の数々

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屋敷に侵入したドルーグたちが

「雨に唄えば」を口ずさみながら

住人である作家と妻を無邪気に蹂躙する

観る者に

意図的に不快感を抱かせる

映像と音による

壮大なる蛮行の一部始終

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さらには

アレックスが獄中で受ける

拷問のような治療

いわば洗脳ですね

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しかし

ショッキングな内容にもかかわらず

実際のところ

映画のトーンは

その残酷さに比して

シリアスではなく

全編

シニカルなブラックユーモアに包まれ

ポップでカラフルな美術デザイン

カリカチュアされた異様な人物造形

そして残酷でグロテスクな暴力描写が

異質で不気味なムードを醸成

無二のディストピアを構築しています

って

自宅を訪問した男が

かつて自分と妻を襲った男だと知った作家が

身を震わせながら驚く様

う〜ん

魚眼レンズで捉えた顔芸が

もう最高です

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いやあ

憎悪と猜疑心と復讐心の塊と化し

アレックスをじっと見据える

このおじさん俳優

誰だかわかりませんが

出色です、ハイ

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アレックスは部屋に監禁されて

大音量でベートーヴェンの第九を聴かされ

激しい発作に襲われ苦しみ抜いた末に

窓から飛び降りて身投げする…

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それにしても

美しくも壮大なる”歓喜”の第九が

なんとまあ

残酷な響きをともなって

観る者の耳に迫ってくることでしょうか

ホント使い方次第で

真逆の効果をもたらしますね

とまあ

そんなこんな

映画は

紆余曲折を経た後

包帯だらけのアレックスが

本来の邪悪さを取り戻して

終わりを告げます

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ふぅ

つくづく

目を見張るは

アレックスの

徹底的に悪に振り切る態度

この

絶対的なまでの純度

圧倒的なまでの強度

…ですよ

アレックスの

このどこまでも揺るぎない姿勢は

むしろ清々しく

ある種、感動的ですらあります

よくよく

容赦ないビジュアル表現に

強烈な不快感を抱く

と同時に

う〜ん

その魅惑の世界観に

えも言われぬ陶酔を味わうこと必至です

というわけで

『時計じかけのオレンジ』

映画史にその名を刻み込む

鬼才キューブリック渾身の力作にして

世紀の問題作

いやあ

あらためて必見です

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おまけ

キューブリックの作品について

以前書いた記事です

◎『2001年宇宙の旅』→こちら

◎『恐怖と欲望』→こちら

◎『突撃』→こちら

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