映画『素晴らしき放浪者』

映画は

複合的な要素

様々な表現が絡み合い

多くの人、物、金、時間が集約して

はじめて創造される

いわば総合芸術です

なのでそもそも

それを文章で表現するというのは

かなり無理なこと

僕の拙い映画評も

往々にして

長々とした文章になりがちですが

言葉だけをもってして

映画の本質

その醍醐味を伝え切るのは

これはなかなかにして難しい

といいますか

まず不可能ではないでしょうか

もとより

文章と映画では

表現の形態が違う

映画は

必ずしも論理的ではない

論理だけで片付けることなど到底できず

感覚的

直感的

感情的

だったりします

構成要素としては

脚本、演技、撮影、美術、照明、音響、編集などなどがあり

それらを網羅したところの演出があり

これら膨大な情報、表現の

集積体であるということ

もっとわかりやすく言えば

言葉で言い表せないことを

映像で表現するのが

映画の映画たる所以で

そういう意味でも

僕は

本ブログにおいて

言葉で表しきれない

映画の感性的な側面

いわばニュアンスを

極力語ることに腐心していますかね

とはいえ

ロジカルな側面も

映画の面白さの大事な要素でもありますので

文章を通して

その映画の本質、魅力の一端を

伝えることが

まあこうした映画評に

求められるのではないでしょうか

特には

映画の視点

どういう目、見方で

その映画を観るのか

を伝える上で

文章は適しているように思います

この映画は

一体何が言いたいのか

創り手はこの映画を通して

一体何を伝えたいのか

演出や画面構成、映画のリズムや流れる空気感そのものによって

創り手が表現したいこと

観客に訴えたいことは

果たして何か?

ということで

すっかり前置きが長くなりましたが

映画評です

1932年製作のフランス映画

『素晴らしき放浪者』

↓↓↓

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監督・脚本は

数々の名作で名高いフランスの巨匠

ジャン・ルノワール(1894-1979)

↓↓↓

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いやあ

この映画

かれこれ100年近く前の作品です

…が

しかし今観ても

決して色褪せない

瑞々しさ

革新性に溢れていて

ちょっと目を見張るものがありますね

自由気ままな浮浪者ブーデュは

↓↓↓

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命を助けてくれた書店主のレスタンゴワの家に

居候することになるが

↓↓↓

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助けてもらった恩などどこ吹く風で

傍若無人な振る舞いで

主人や奥さん、女中を困らせることばかりする

↓↓↓

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あげく奥さんと浮気し

女中も手なずけようとし

ほとほと耐えかねたレスタンゴワは

彼を追い出そうとするが…

う〜ん

何とまあ

無茶苦茶な話で

ブーデュの不遜な態度は

ちょっと目に余るものがあります

…が

よくよく

彼は

風の吹くまま

気の向くまま

何ものにもとらわれず

どこまでも自由なのです

金もいらない

信用もいらない

本音しか言わない

他人に対する配慮も遠慮も

とにかく何もない

人に嫌われてもいっこうに構わない

道徳も倫理もフル無視

世の体裁や常識、打算などと無縁で

己の気持ちにどこまでも忠実に

まっすぐに生きているのです

いやあ

この純度の高さ(!)

そしてブーデュのハチャメチャぶりが目立つ中で

次第に周囲の人たちの

嘘や建前も露呈していきます

宝くじで大金を手にしたブーデュに

女中アンリがコロッと態度を変え

やがて結婚することになる

そうして河辺で挙式をあげるブーデュだが

レスタンゴワや神父などと一緒に小舟に乗って式場を後にする際

バランスを崩して小舟が横転

皆、大慌てで岸辺へ向かうが

ブーデュはゆらゆらと流されるままで

↓↓↓

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また再び一切を捨てて

元の放浪者に戻る…

つくづく

人間の生き方とはどうあるべきなのか

本当の幸せの尺度とは何か

ふぅ

自由でおおらかな人間観

明らかなブルジョア批判

見栄えや対面にとらわれる西洋文明に対するシニカルな目

このある種、反体制的なまでの志向には

まずもって驚かされますね

また特には

終盤の河辺のシーンは

幻想的な美しさに溢れていて

いやあ

映像美で知られるルノワールの

まさに真骨頂ですね

ブーデュ役は名優ミシェル・シモン

世のしがらみから解放された

社会不適応な放浪者を

のびのびと飄々と演じ

抜群の存在感を放っています

↓↓↓

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とまあ

そんなこんな

100年近くも前の映画にして

この世界観、メッセージ性

完成度ですよ

もう言葉など吹き飛びますね

今更ながら

昔の映画ってすごいですね

というわけで

『素晴らしき放浪者』

巨匠ルノワールによる

映画芸術の粋が詰まった

まさにコメディの古典的名作です

↓↓↓

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