映画『白いリボン』

先日

といってもだいぶ前ですが

ひっさしぶりに映画館に行きました

年末のオープンやらなんやらで

最近なかなか観る時間がなかったのですが

これだけは何がなんでも

と、ようやく観に行くことができました

ミヒャエル・ハネケ監督の新作

『白いリボン』

↓↓↓

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今年は

いやもう去年ですね

あまり本数を観れてなかったのですが

この作品

間違いなく僕の2010年のベスト1ですね

いやあ

すごい映画でした

ドイツの

プロテスタントの

ある小さな村で起こった

不可解な出来事の数々

犯人も動機もイマイチはっきりしないまま

この静かな村は

やがてゆっくりと

不穏なる空気に包まれていきます

登場人物たちの相関が

だんだん明らかになるにつれて

様々な負の感情が至るところで渦巻き

それが更なる悲劇の連鎖を招きます

映画は最後まで抑制されたトーンを失わず

事件の残虐性も直接的には見せず

事件後の姿や

人々の言葉を通してなど

間接的な表現にとどめています

その節度が

昔の名画のような品位を感じさせると同時に

(モノクロの映像がただもうひたすら美しい…)

一方で

あらぬ想像力をかきたて

その不気味さや

ただならぬ気配を

全編に漂わせて

なんとも不安な気分にさせられます

こうした抑制は

厳格なプロテスタンティズムが内在する

抑圧的なあり方をストレートに想起させます

そしてその抑圧のあおりをモロに受けているのが

子供たちという構図になっています

ちなみにタイトルの白いリボン

詳細は省きますが

子供たちに強いる抑圧の象徴として

劇中に出てくるアイテムです

子供たちは子供たちなりに

フラストレーションを小出しにしていきます

無垢がゆえの残酷さ

にわかに

ハネケ監督の狙いが浮かび上がってきます

この映画は

子供たちを

加害者とも

被害者とも

捉えられる描き方をしていて

そこらへんの解釈は

観ている僕らに委ねられているといってもいいでしょう

なかなかキツイことですね

映画の終わりで第一次大戦勃発の知らせがあります

映画は

来たるべきナチスの台頭を受容する社会的基盤が整いつつある

その背景や気運を

この小さなドイツの寒村の中に見出し

やがてナチズムの狂信的な扇動の役割を担っていく世代の

萌芽を

子供たちの中に見るのです

抑圧の蓄積が

ナチズムを育て

やがてそれが一気に爆発する

後に起こる狂気の沙汰を

この静かで美しい村から連想させる監督の手腕

想像力を喚起させることで生まれる恐怖

観る者一人一人の中に内なるナチズムを認めさせ

全くもって感情をかきむしられる

う~ん

なんてすごい映画でしょうか

というわけで

『白いリボン』

まこと恐るべき傑作です

↓↓↓

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