映画『母なる証明』

先日TVで放映してるのを観ました

2009年の韓国映画

『母なる証明』

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監督は

『殺人の追憶』や『グエムル』などの

ポン・ジュノ(1969-)

↓↓↓

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う~ん

すごい映画です

何度も唸ってしまいましたね

物語は

韓国のある田舎町で

女子高生が殺害される事件が起き

その容疑者とされた

頭の弱い無垢な息子の

無実を晴らそうと

真犯人探しに奔走する母の姿を描いたもの

↓↓↓

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こう書くと

息子を守る強い母親を描いた映画

といった感がありますが

いやいや

話はそう単純ではありません

この映画

とにかくダークです

ブラックです

たしかに紛れもなく

母と子の強い絆

母性

を描いてはいますが

その実態はいびつで

暗い影に覆われています

しっかしこの監督

なにしろ

芸が細かい

小技が効いています

かと思えば

あっと驚かせる大胆な演出で

観る者の予想を鮮やかに裏切ってみせます

哀しみの表情をたたえた母が

草原でひとり突然踊り出す

意表を突いたオープニングからはじまって

↓↓↓

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冒頭

母が店内で薬草を切るナタの音と

外で車が走る現場音が

強調され共振し合い

ふと

外にいる息子が

走る車と接触し

とっさに母親が外に飛び出していくシーン

息子に対する偏愛

過剰なまでの関心ぶりを表した

この母親の主観ショットからしてもう

やられましたね

日常の何気ない光景を

一瞬でサスペンスの舞台に変えてしまう

その張り詰めた空気感

とにかくこの映画

心の隅っこにこびりついて離れない

そんないつまでも印象に残るシーン満載です

母のギョロギョロとした目の動き

息子トジュンのきれいな目と腫れた目の対比

治療で大量の針が刺さった足

折れた歯

漢方の薬草を切るナタ

血のついた足の裏

などなど

部分部分を大写しで捉え

不安感を助長させます

また

無実の息子を助けようと奔走する

母の必死の形相を

アップで捉えた

手持ちカメラによるブレた映像が

時折

唐突に挿入され

母の焦りや執拗さが

臨場感と共に画面からひしひしと伝わってきます

登場人物たちの造形も奇異で

しかし妙にリアルだったりします

そうした集合体である

韓国のとある田舎の町そのものが

醸し出す不気味さ

映画の舞台は

小高い丘陵や坂が多く

とても起伏に富んだ地形

韓国ってこういう所が多いんですよね

青みがかった映像も手伝って

なんとも不穏です

そんな奇異な世界観の象徴が

容疑者である息子トジュンです

物覚えの悪い無垢なトジュンが

突然思い出す暗い記憶のディテール

人間の持つ底知れぬ側面を

ウォンビンが見事に体現しています

↓↓↓

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そして

次第に明らかになるこの小さな町の黒い秘密

驚愕の真相

そのとき母のとった行動とは

う~ん

肌寒さを覚えましたね

でも全てが明らかになったようでいて

実はそうでもない

事件はまさしく

韓国のゆがんだ社会がもたらした産物で

そうした現代の韓国社会がはらむ危うさ

人々の心の奥底に巣食う

ネガティブなエネルギーが沈殿した様を

この映画は見事に映像化しています

韓国映画って

どうしてこう

なんといいますか

情感が豊かなんでしょうかね

まるで黒澤明の映画を観ているようです

ジュノの傑作『殺人の追憶』でも感じられましたが

いやあ

パワフルです

血が通っています

エネルギーが充満しています

泥臭いです

全編に底冷えする不穏さが漂ってもなお

画面はヒリヒリと熱を帯び

力がみなぎっています

母親役キム・ヘジャの情念

↓↓↓

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得体の知れないウォンビン

真相は藪の中

韓国映画の底力をまざまざと見せつけられた一本

しっか

どこの国もそうですが

母親は強し

ですね

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