映画『ミツバチのささやき』
何年ぶりだろう…
先日TVでやってたので久々に観ました
1973年製作のスペイン映画
ビクトル・エリセ監督の
『ミツバチのささやき』
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自然光がもたらす陰影の濃い映像
極力説明が排除されたストーリー
少ないセリフ
ミツバチや吹きすさぶ風の音などの現場音
“未知なる精霊”としてのフランケンシュタインを象徴とする
この決して全貌をさらさない映画は
その情報量の少なさとあいまって
主人公の少女アナの
限りない想像力
無垢なる感性
少女の持つ繊細さ、あやうさ
そして
確かな知性を
あますことなくとらえることに成功しています
いやあ
美しい映画です
ときはスペイン内戦が終わったあとの1940年
フランコ独裁政権の時代
戦争がもたらす暗い影を
自分を取り巻く家族や出来事を通して
無意識に感じ取る少女アナの強い感受性
主人公の少女アナは
村で上映した映画『フランケンシュタイン』を観て
大きな怪物が自分の村はずれにいると思いこみ
漠然とした不安に駆られます
寒空にひろがる荒涼たる草原
吠えたてる犬の鳴き声
地面に残された大きな足跡
そして傷ついた兵士や
家族との不協和音
ただそこにいてじっと見つめる
少女アナのどこまでもピュアな瞳が
観る者に様々な想像力を喚起させます
↓↓↓
スペインの農村を舞台にしたこの映画は
全編これ絵画のようで
とにかく美しい場面にあふれています
しかしただ美しいだけではありません
これは主人公の少女アナの心の内をあらわす
心象風景なのです
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アナの無垢なまなざしに秘められた
とまどいや怖れ
ここに映し出された世界は
いつも曇天でさびしさが漂っていて
繊細で張り詰めていて
でも素朴で無垢でもあり
自然のありのままの姿からは
霊気のようなものすら感じることができます
実はアナは
フランケンシュタインという未知なるものに対して
怖れと同時に
ある種の親近感を覚えています
この映画は
戦争の爪痕が人々の心に生々しく残っている現実を
鏡のように映し出すアナが
そんな状況を見つめていくうちに
やがてしっかり向き合っていく成長過程を描いているのです
ラスト
暗く静かな画面から発せられるアナの力強いまなざし
いやあ
主人公の少女アナがとにかく素晴らしいです
映画を観ていて
つくづく
情報量と想像力は反比例するなぁ~
と感じましたね
この映画の持つ神秘性
画面から静かに漂ってくる聖性
これはひとえに
陰影の深い映像や
少ないセリフがもたらしたもの
でも充分伝わります
これ以上知る必要はないと思いますね
そのぶん想像力が縦横無尽に働くのですから
画面の隅々に目を凝らし
耳を澄ますことができるのですから
それによって映画から得られる多くの気づき
いやあ
こういう映画最近ホント見ないですね
観終わって
しばらく余韻に浸りましたね
静かで
豊かな
至福のひととき
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