映画『マルホランド・ドライブ』

2001年のアメリカ映画

『マルホランド・ドライブ』

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監督・脚本は

映画史にその名を轟かす鬼才

デヴィッド・リンチ(1946-)

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リンチのまぎれもない最高傑作です

前途有望なハリウッド女優のベティと

自動車事故から命からがら彼女の家に迷い込んできた

謎の女リタ

映画は

ショックから何も思い出せないでいるリタを

ベティが助けるところから始まるのですが

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華やかでドラマティックな展開の前半から

一転

しかし後半は

全く様相の異なるストーリーが映し出されます

女優を目指してハリウッドにやってきたダイアンは

成功を掴めず端役しか回ってこない

一方、恋人のカミーラは監督に気に入られ大役をゲットした上

ダイアンを捨てて監督と婚約する

裏切られたダイアンは嫉妬と怒りに駆られ

殺し屋に依頼してカミーラを殺そうとする(か、もしくは実際に殺した)

が、警察の捜査が進み

精神的に追い詰められた末

やがて自殺するに至る

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本作は前半と後半とで

出演者たちの役名もキャラも何もかも変わってしまうので

初めて観た時はわけがわからず

僕もかなり戸惑いましたね

まあ今更なので

ネタバレOKかと思いますが

本作は

前半=ダイアンの願う夢

後半=彼女の不幸な現実なのです

なので前半では

ダイアンは注目の大型新人ベティになっていて

彼女にとって都合のよいストーリー展開に終始しているのです

つまりこの映画は

「ハリウッドでの成功を夢見るも、やがて厳しい現実が待ち受け、夢破れ、こんなはずではなかったと失意のうちに死を選ぶに至ったダイアンが、死の間際に彼女の脳裏を駆け巡った、願望まじりのはかない夢」

ということになります

つくづく

奇妙なせめぎ合いを見せる現実と夢

およそ容赦のない残酷な現実

そこから逃げるように

おぼろげに思い描く

願望

空想

はたまた妄想

としての淡い夢

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何より特筆すべきは

夢の描写の数々です

現実に目撃したものや想像の産物が

夢の中で目まぐるしく入れ替わり反芻されて

別人や別の姿形、メタファーとなって現れる

際立つ記号化されたアイテムとしての金髪

唐突に出現する異世界

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老夫婦の奇怪なざわめき

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小さくなってうごめいて来る異様

置き換えられた人物たちが

不吉な予感とともにザワザワと押し寄せる

この時に夢(あるいは現実)の中で抱く

えも言われぬ焦燥感

得体の知れない恐怖

そして絶望

そう

映画は

死への秒読み段階に入った人間の頭の中を

夢という形で視覚化しているのです

なんという画期的な試み

革新的な映像表現でしょうか

観終わった後

記憶をまさぐりながら各シーンを思い出すのですが

程なくして不穏に満ちたイメージを

自身の中に発見します

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正直、観ていて

何かと思い当たる節があるんですよね

つまりは自身の深層心理を覗き見したような

ある種、禁断の領域

まるでナイフが懐に刺さったような

一線を越えてしまったような観念に

ひとり密かにとらわれ

ホラーともサスペンスとも違うドキドキ感を覚えながら

瞬間的につど気づきを得て

そうしてやがて

異様な興奮に包まれる不思議

このめくるめく

文字通り、悪夢の世界

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つくづく

これほどまでに魅惑に満ちた映画が

他にありましょうか

あらためて主演のナオミ・ワッツが

もう圧巻の熱演です

夢と現実との

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この見事なギャップ

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というわけで

本作『マルホランド・ドライブ』は

異才リンチが到達した

リンチワールドのまさに完成形

観る者を闇へと誘い

誰もが虜にならずにはいられない

まこと恐るべき傑作です

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