映画『ざくろの色』

前回に引き続き

アルメニアの鬼才パラジャーノフをご紹介

1969年製作の代表作

『ざくろの色』

元のタイトルは

『サヤト・ノヴァ』ですが

難解さを理由にソ連当局の検閲にかかり再編集され

現存しているのが本作

彼が投獄されるきっかけとなったいわく付きの

しかし数々の伝説に彩られた傑作です

アルメニア文化の豊穣さと

その前衛的で革新性に富んだ作風に

世界が驚嘆しました

本作は

18世紀のアルメニアの吟遊詩人

サヤト・ノヴァの生涯を描いたものですが

映画の冒頭に

「この映画はサヤト・ノヴァの人生を描いたのでない。映画という手段を使ってその詩の想像的世界を表現しようとした

というパラジャーノフの創作意図が綴られます

そしてタイトル

画面に並ぶざくろの実

じわじわと赤い汁が滲み出し

バックの白地の布が赤く染まっていきます

↓↓↓

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「わが生と魂は苦悩の中にある」

というテロップが度々挿入されるように

ざくろの赤い汁は

思うに鮮血の象徴

つまり

アルメニア人の苦難を想起させましょうか

それにしましても

この映画

まずもってストーリーが

あってないようなもの

8章に分けて詩人の生涯を描いているのですが

全編セリフがなく

余計な説明もなし

あくまでもパラジャーノフに宿る

詩的イメージの断片をつなぎ合わせたかのような

いわば映像詩です

ストーリーを追うことを主眼とした

映画の見方に慣れてしまった僕らにとって

最初はかなりの戸惑いを覚えますが

すぐに眼前に繰り広げられる

神秘と幻想の世界観に陶酔すること必至

まさに異文化の体験です

ということで

今だかつて観たことがないであろう

独特の味わいに満ちた

その魅惑の映像の数々を

ザザッと掲載

干して並べられた書物と過ごす幼年期

↓↓↓

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豊かな色彩感覚と過度な装飾

平面的でシンメトリーの構図を多用

↓↓↓

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ユニークなのは

若き日の詩人、その恋人、尼僧、天使などを

ひとりの女優(=ソフィコ・チアウレリ)が演じている点

↓↓↓

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詩人と恋人との繊細な感情の交感を

レースや糸巻きで表現

↓↓↓

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人物たちは常に真っ正面か真横を向いていて

背景がどこであれ

ほとんど立ち位置が変わりません

漂う神秘性

徹底した様式美に裏打ちされています

↓↓↓

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カメラは常に固定されているので

まるで絵画

特には宗教画を観ているような感覚

どことなく不気味で異質

儀式的イメージが並びます

↓↓↓

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詩人の死

神話的

それでいて

祝祭的な色合い

↓↓↓

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ローカリズム満点ですね

パラジャーノフの凝った画作り

背景や人物配置、小道具類などを見てると

その端々にアルメニアの歴史や宗教を象徴する

多くの隠喩が

随所に散りばめてあるだろうことが想像されますが

そこらへんはちょっとわかり得ませんね

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ただただ

その夢のような

魅惑の映像美に酔いしれるのみです

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いやあ

全編を貫く

この溢れる生命力

アルメニアの風習や生活様式、宗教など

その異質の価値観に触れる喜び

観ていて

おのずと自分の中に

様々なイマジネーションが喚起されるのを覚えます

というわけで

パラジャーノフの魂が宿った一本

必見です

実は

一般公開されている冒頭の『ざくろの色』は

検閲を受けてセルゲイ・ユトケーヴィチによって再編集されたもの

この、いわばロシア・ヴァージョンに対して

近年、アメリカのマーティン・スコセッシ映画財団が

紛失してしまったオリジナル版『サヤト・ノヴァ』に近づけるべく

シーンの追加や再編集を施し復元したヴァージョンもあります

う〜ん

あらためて両方をじっくり観比べてみたいですね

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