映画『アシク・ケリブ』

つくづく
どんな芸術ジャンルにも言えることですが
たとえば映画においても
映像を正しく読み取ることが
う〜ん
あらためて
これ大事ですね
自分の感性で観るのも
もちろんありですが
その前にまず
創り手が何を伝えたくて
作品を創ったのかを
できるかぎり
知ろうと努めること
まあ
往々にして
それがさっぱりわからない映画も
多々あるわけですが…
でも創り手が言わんとすることを
理解すればするほど
いやあ
映画というのは
断然面白く感じるはず
ある意味
自分の了見を超えた
思ってもみない景色が見えることになるのです
と
反対に
独りよがりな見方は
映画の面白さを
半減させているだけでなく
創り手に対する
敬意を欠いているとさえ言えますかね
正確に丁寧に
厳しくも誠実な眼で
作品に向き合うこと
映像を読み解く
特には
ニュアンスを理解するよう努めること
いやあ
まず何より
この姿勢が大事かなと
つくづく
思う今日この頃です
ということで
前置きが長くなりましたが
映画評です
1988年製作
旧ソ連の映画
『アシク・ケリブ』
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監督は
グルジア(=ジョージア)出身のアルメニア人
セルゲイ・パラジャーノフ(1924-1990)
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言わずと知れた
数々の苦難に見舞われた天才映像詩人で
本作が彼の遺作に当たります
ロシアの国民的詩人
ミハイル・レールモントフのお伽話を元に
パラジャーノフが
自由奔放に映像化した異色作です
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…
貧しいながらも心優しい吟遊詩人
アシク・ケリブ
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彼は富豪の娘マグリと愛し合っていたが
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結婚を申し込むと父親から一蹴されてしまう
それでも
千の夜と千の昼の後に帰ると娘に約束し
放浪の旅に出るアシク・ケリブ
そんな彼を様々な困難が待ち受ける
ある時
彼の前に聖人が現れ
マグリが他の男と結婚させられようとしている
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と告げられたアシク・ケリブは
聖人の白馬に乗って故郷へと急ぐ
無事なんとか間に合い
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晴れて結ばれるふたり…
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とまあ
本作は
イマジネーションを駆使して
縦横無尽に展開される
美しい恋物語です
って
話の筋は
単純なお伽話なのですが
しかし
映し出される映像世界は
まるで異質で
画面越しに一体何が行われているのか
容易にわからなかったりします
説明的な要素は皆無で
セリフも極端に少なく
登場人物たちは様式的な身振りで表現
画面構成も奥行きを排し
シンメトリーを多用した
絵巻物のようなパノラマ図が展開
まるで人形劇のような形式で
まあ観ていて
摩訶不思議な世界観です
↓↓↓
…が
よくよく
この無二の独創性
極彩色に彩られた鮮烈な映像表現は
まこと目を見張るものがあります
何より長年
旧ソ連当局による迫害の憂き目に遭いながら
自身のアイデンティティを貫き
宗教色、民族色豊かな
イコンなどの美術品や調度品、衣装など
アルメニアの文化、習俗を
自作に投影し続けた
パラジャーノフのこの反骨心
権力への抵抗を示し続けた
彼のまぎれもないスタンスが
本作においても
映像の端々に息づいていて
もう圧巻の一語です
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パラジャーノフが
映画製作やその他の活動を通して
一体何を表現しようとしたのか
どんなことを伝えたかったのか
その一端でも探ろうと努めることが
異文化を知る
つまりは
世界を知ることにつながるのかなと
現代の混沌とした情勢を憂慮しながら
つくづく感じる次第です
というわけで
『アシク・ケリブ』
パラジャーノフの魂が宿った
めくるめく美しさに彩られた遺作
これは必見です
おまけ
パラジャーノフと彼の作品について
僕が以前書いた記事です
◎悲劇の天才パラジャーノフ→こちら
◎映画『ざくろの色』→こちら
◎映画『スラム砦の伝説』→こちら










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