映画『日の名残り』

1993年製作のイギリス映画

『日の名残り』

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監督は名匠

ジェームズ・アイヴォリー(1928-)

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本作は

カズオ・イシグロの

同名のベストセラー小説の映画化です

1958年、イギリス

かつて名門貴族ダーリントン卿の屋敷で

執事を務めてきたスティーブンスは

当時の女中頭ケントンから

20年ぶりに便りをもらい

彼女に会いに行き

在りし日を回想する…

1930年代

若き日のスティーブンスは

主人への忠誠心を何より重んじ

父親の最期の時にも仕事を優先するほどの

完璧主義の執事

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屋敷に赴任してきたミス・ケントン は

スティーブンスとは対照的に

感情豊かで率直な物言いもいとわない

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そんな2人は

業務を通して

対立を繰り返しながらも

互いに惹かれ合っていくが

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職務に忠実だったスティーブンスは

彼女が好意を寄せていることをどこかで察するも

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ついぞ告白することなく

やがてケントンは別の男性からの求婚を受け

屋敷を去ってしまう

そんな頃

ダーリントン卿がナチス・ドイツに

同情的な立場を取っていたことが明らかになり

後に大きな政治的誤りとして

世間に悪評が立ってしまう

スティーブンスは

ダーリントン卿の見識や事実を

十分に疑問視することなく仕え続けたことで

結果として

自身の人生の意義すら見出せなくなってしまう…

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そうして冒頭の通り

20年の時を経て

スティーブンスとケントンは再会を果たす

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彼女に職場復帰を提案するも

娘の妊娠を理由に断られる

ケントンも間違いの人生だったと吐露する

互いに失われたものを取り戻すことはできず

悔恨が入り混じる中

2人は別れを遂げる

お互いもう二度と会うことはないと

わかっている…

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スティーブンスは

ダーリントン卿亡き後

新たにアメリカ人の富豪が買い取った屋敷へと

ひとり帰っていく…

ふぅ

人生とは何か

幸福とは何か

を思い巡らさずにはいられない

そんな静かな余韻を残す

切ない別れのシーンです

つくづく

英国の秩序と伝統を守ることを

第一義とする侯爵の意向のもと

執事の職務を全うすることに

全精力を注ぐスティーブンスは

しかしそれによって

他者との関係や

自分の感情そのものをも

どこかでないがしろにすることになり

さらに皮肉にも

侯爵への忠誠が

後に彼自身を縛る鎖となってしまいます

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何より

ケントンに対し

思いを伝えることをせず

己の感情を封じ込めてしまった

それによって

人生の大切な瞬間を逃してしまった…

それが後々

彼の人生に

悔恨という影を落とすことになります

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う〜ん

観ていて

胸が苦しくなりますね

自分に当てはまる部分が

少なからず見出せて

つくづく

人生悔いのないように

今を生きなくてはならないなぁ

と自身の過ぎ去った日々を顧みつつ

しかしスティーブンスのように

全身全霊を込めて

与えられた仕事を全うした人生というのも

これはこれで素晴らしく

むしろ

人の役に立つことこそが

生き甲斐であり

真の幸福だと思えるのは

至極当然のこと

ここらへんは

何が幸せなのか

一概に言えないところですが

本作においては

否定的な色合いが濃く描かれています

それはそうと

執事を主とする

屋敷での煩雑極まりない業務のディテール

おそらくは本物を取り揃えたであろう

豪奢で味わい深い調度品の数々を取り扱いながら

規律と調和を重んじて

日々、貴族の生活様式を維持する様は

観ていてとても興味深く

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派手な展開や大きな事件が

起こるわけではないのですが

静かで淡々とした日常は

どこかスリリングでもあり

端正な生活リズムがもたらす

ある種の美しさが

全編に宿っています

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また本作において

特筆すべきは

英国の階級制度や

伝統的な価値観が崩れていく様が

背景として描かれている点にありましょうか

1939年9月

英仏が独に宣戦布告して大戦に突入する前

ダーリントン卿の屋敷には

各国から要人が集まり

国際会議が開かれるのですが

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この場で

ダーリントン卿をはじめとする

ヨーロッパの親独派に対し

アメリカの資本家が苦言を呈するあたり

新しい価値観が台頭する様を

垣間見れて面白いですね

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とまあ

そんなこんな

何より本作は

主演のアンソニー・ホプキンスと

エマ・トンプソンの2人がもう抜群で

抑制された佇まいのスティーブンスと

健気で愛情深いケントンとの

感情のはかない交感が

観る者の心を揺さぶらずにはいられません

まさに大人の純愛ともいえる

ロマンチックで

それでいてリアルなムードを

存分に堪能することができます

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いやあ

なんてほろ苦くも

味わい深い映画でしょうか

名匠アイヴォリーの

繊細な心理描写が光ります

というわけで

『日の名残り』

格調高く

深い余韻に包まれた傑作

あらためて必見です

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