映画『ラ・パロマ』

1974年製作

スイス・フランス合作の

『ラ・パロマ』

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監督はスイスの鬼才

ダニエル・シュミット(1941-2006)

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本作は

青年貴族と娼館の歌姫との

不条理な純愛を描いた幻想譚で

シュミットの

耽美派としての異才ぶりを

世に知らしめた

彼の長編二作目にして

まぎれもない代表作です

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オープニングのタイトルロール

マジックアワーの夕陽

美しい湖畔の水辺に

太陽が

徐々に消えていく…

ふと

ルーレットの玉の転がる音が

どこからともなく聞こえ

妖しい光を放つ夜の空間へと移り変わる

ここはマダム・リリーの娼館

歌手、芸人、ディーラー、マジシャン、娼婦

そして客たち各々が

孤独を紛らすかのように

つかの間のひとときに興じる

命をかけた賭博が行なわれ

その一方で

娼婦たちに混じって

艶やかに着飾った少女や

美少年の姿も垣間見え

(今観るとかなりヤバい映像…)

酔客たちの傍らに身を置く

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カメラの緩慢な動き

紫煙をくゆらせる夜の女

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う〜ん

香りたつ背徳のムード

映画は

衰退して久しい

ヨーロッパの貴族文化の

かつての栄華と

そこに宿る退廃を

ある種のノスタルジーを込めて

呼び覚まします

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気怠くも官能的な歌声

この娼館で評判の歌姫

“ラ・パロマ”ことヴィオラが

シャンハイを歌いながら舞台に現れる

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そんな彼女の艶やかな姿を

ひとり陶酔の心地で見つめる

貴族の青年イジドール

ほのかに聞こえてくる

奇妙なノイズ

“想像する力”

という言葉とともに

にわかに性別が判別しづらい

謎の人物による

緩慢なパフォーマンスが始まる

ちょっと異質な存在感…

ふと

知らぬ間に

その演者は

イジドールの背後にいた

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気配を感じて振り返るイジドール

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不気味で不穏で

しかしどこかピュアな演者と

じっと見つめ合い…

2人の間には

ただならぬ磁力が発せられ

自ずとある種の

幻惑状態へと没入する

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ふぅ

なんという空気感

映画は

魔術的なムードを宿しながら

観る者を異世界へと誘います

貴族の青年イジドールは

娼館で歌うラ・パロマことヴィオラに魅せられ

毎晩懲りずに楽屋に花束を届けては

彼女に思いを伝える

ヴィオラはそっけない態度を示すも

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よくよく

自身、病を抱えた身ということもあって

彼の求愛を受け入れることとし

そうして

イジドールの母の許しを得て

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晴れて2人は結婚する

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無償の愛を捧げるという

イジドールの優しさに包まれ

徐々に病から回復しつつあったヴィオラだが

しかしある夜

夫の親友ラウルと愛し合ってしまう

さらにヴィオラは

ラウルとの不倫関係を続けるための援助を

夫であるイジドールに申し出るも

なんでも受け入れてきた彼は

これを拒否

するとヴィオラは夫に失望し

日々衰弱し

ついに息絶えてしまう

そして三年後

彼女の遺言により

イジドールは彼女の墓を掘り起こし

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おそるおそる

棺を開けると…

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う〜ん

なんとまあ

ありえない展開

ヴィオラの独善も

イジドールの狂気も

すべては

夢か

それとも…

イジドールは娼館にいた

そしてラ・パロマはシャンハイを歌う…

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つくづく

本作は

歌姫ラ・パロマこと

ヴィオラを演じる

イングリット・カーフェンの

妖艶なまでの美しさに

もう尽きますね

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死の影をまとう

ヴィオラの

優美な佇まい

虚空を見つめるまなざし

とりわけ

甘美なピアノの音色と共に

ゆっくりと階段を降りてくる

真っ白なドレス姿のヴィオラを

捉えたショットは圧巻でした

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幽玄

諦念

色気

漂う妖気

およそこの世の人とは思えない

悠然としたムード

まさに

エロスとタナトスの

これ化身ですね

さらに

純朴で一途な貴族の青年イジドール役の

ペーター・カーンも

出色の存在感で

ヴィオラへの叶わぬ愛を

全身全霊を込めて熱演

2人の相性が

なんとも絶妙でいいんですよね

特に

雄大な山頂をバックに

コルンゴルトのオペラのアリアを歌うシーンは

本作屈指の名場面となっています

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2人の間に交わされる

濃密な視線のやりとり

度々挿入される

流麗なオペラや音楽に合わせて

展開される

奇妙でグロテスクな異形の愛

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異世界の扉が開き

そして

すべてを煙に巻いた

あっと驚く

ラスト…

とまあ

レナート・ベルタの撮影による

色褪せたような

ざらついたフィルムが

むしろ味わい深く

映し出された映像は

単なる美しさにとどまらない

張り詰めた緊張感を内包していて

う〜ん

うまく言葉に表すことができませんね

あらためて

全編に底流する

キッチュで退廃的な

バロック的世界観

終始緩慢なテンポ

視線や身振りにある種の厳格さを求めた

いわば様式美

オペラ的、演劇的作為性

怪奇・幻想趣味

エロティックな風情

ディテールを極めた雰囲気描写の数々

などなど

いやあ

なんとまあ

魅惑の世界観でしょうか

というわけで

『ラ・パロマ』

シュミットの特異な美意識に裏打ちされた

幻影と虚構に満ちた耽美の極致

これは傑作

普通の映画じゃありません

観る者を惹き込んで離さない

強烈な魔力を持った稀有な映画

是非とも必見です

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おまけ

よくよく

僕の映画評の中で

最も多く取り上げているのが

実はシュミットでして

以下、ご参照

↓↓↓

◎『今宵かぎりは…』→こちら

◎『ヘカテ』→こちら

◎『天使の影』→こちら

◎『デ ジャ ヴュ』→こちら

◎『KAZUO OHNO』→こちら

◎『書かれた顔』→こちら

◎『今宵かぎりは…』再鑑賞→こちら

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