映画『薔薇の葬列』

前回に引き続き

僕の趣味全開話です

1969年製作の日本映画

松本俊夫監督の

『薔薇の葬列』

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実験映像の先駆者松本の

長編劇映画第1作にしてまぎれもない代表作

そのほとばしる才気

観る者の価値観を揺さぶるような毒気に溢れた傑作です

いやあ

もうストーリーからしてぶっ飛んでます

新宿のゲイバー「ジュネ」の看板少年であるエディは

経営者の権田と親密な関係にある

それを知った店のママ、レダは

嫉妬のあまりエディを傷つけようとするが失敗

そうして店も権田も独占したエディだが

しかしある事をきっかけに

「母を殺して父と寝る」

という自らのおぞましき宿命を悟る

う〜ん

「父を殺し母と交わる」

というパゾリーニの『アポロンの地獄』でも描かれた

オイディプスの悲劇を反転させ

またその舞台を

60年代末期の新宿のゲイバーに置き換え

倒錯した近親相姦の世界が

縦横無尽に展開されます

主演は当時16歳のピーター

本作で鮮烈なデビューを飾ります

↓↓↓

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その妖しいまでの美少年ぶり

まさに

ピーターの存在そのものが

シュールで独創的な松本ワールドの

これ体現ですね

そして映画は

街頭でのハプニングを誘発するゲリラ撮影や

途中、監督が俳優へインタビューを試み

主人公たちがカメラに向かって喋るなど

もう何でもあり

まさに虚構と現実

フィクションとドキュメンタリーが渾然一体となった

アングラな世界観を創出します

↓↓↓

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マリファナまみれの乱交ぶり

う〜ん

ヤバいです

この猥雑なまでのエネルギー

強烈なビジュアル体験ですね

また本作には

映画監督の篠田正浩や藤田敏八

演出家の蜷川幸雄や映画評論家の淀川長治など

著名人が多数出演していて

まあ

こうしたムードは

当時の先端だったんでしょうね

実は1969年には

松本と奇しくも同い年の大島渚が

やはり新宿を舞台にしたアングラ映画

『新宿泥棒日記』を撮っており

こちらは横尾忠則や唐十郎などが出ていて

こうした文化的な様相をともなった

当時のリアルな空気感を

これらの作品から如実に垣間見ることができて

とても興味深いですね

そうして映画は終盤

コミカルですらあったトーンから一転

呪われた悲劇の結末へと突き進んでいきます

つくづく

既成概念にとらわれない自由な視点に立った上での

未知なるビジュアルの創造

視覚の持つ政治的な意図から

観る者の意識を解き放とうとする様々な試み

まさにラディカルな映像作家、松本の面目躍如といったところですね

そして何より本作は

松本がかねてから追求してきた

外面の客観的記録であるドキュメンタリー映画と

内面の主観的表現であるアヴァンギャルド映画との

同一化

まさに

共生

の見事な結実と言えましょうか

というわけで

いやはや

すっかり僕の独りよがりな話に終始してしまいました

いずれにせよ

松本俊夫の『薔薇の葬列』は

伝説の映画です

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