不思議な存在感
前回に引き続き
フランスの女優
アンヌ・ヴィアゼムスキー(1947-2017)について少々
今回は彼女が出演した作品群を、
以下つらつらとご紹介したいと思います
まずはジャン=リュック・ゴダール監督
『中国女』(1967)
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ゴダールが自身の作風を大きく転換し
“政治の時代”へと突入する先駆けとなった作品
現代を生きる若者たちの中に
階級意識を見出すことで
当時のフランス国内に拡がっていた
毛沢東主義の
異化・解体を試みた野心作です
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アンヌは主人公の哲学科の学生役ですが
“革命”をどこまでも気分で捉える
浅はかな模倣性を
例の(!)うつろな目で体現
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演出風景です
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ちなみに本作がきっかけとなって
2人は17歳差ながら夫婦の契りを交わします
さらに
ゴダールのジガ・ヴェルトフ集団時代の一本
『東風』(1970)
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前衛と呼ぶべきでしょうか
西部劇の体裁をとりつつ
あくまで階級闘争を表現しようとしている時点で
もう正直
わけわからんですね
若き革命家役のアンヌ
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しっかしアンヌは
ジガ・ヴェルトフ時代のゴダール(実際は匿名)の作品によう出ていますが
なにせ難解で意味不明なものばかり…
でも映画史的には
とても貴重なフィルムに違いありませんね
次にアンヌの記念すべきデビュー作
『バルタザールどこへ行く』(1966)
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孤高の映画作家、ロベール・ブレッソンが
当時10代だった彼女を主演に抜擢
ある意味
アンヌのその後の人生を決定づけた一本
人間の罪を一身に背負うかのように
過酷な仕打ちを受ける一頭のロバ
バルタザールを通して
人間の愚かさ、醜さを冷徹に見つめた
言わずと知れたブレッソンの傑作です
アンヌはバルタザールが
唯一、心を通わせるあどけない少女役
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思春期の少女が大人になる過程で経る
その繊細で不安定な心情を
運命を黙って受け入れる一頭のロバに重ね合わせるように
少女とロバは同じ哀しい目をしています
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優しく穏やかな時が流れる中で進行する
残酷な
それでいて本当に美しい映画です
アンヌを演出するブレッソン監督
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さあそして最後に
イタリアのピエル・パオロ・パゾリーニ監督の
『テオレマ』(1968)
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唐突にやってきた謎の青年の来訪によって
ブルジョワ一家が崩壊していく様を
淡々と見つめた問題作です
マルキズムとカトリシズムが渾然一体となった
パゾリーニの特異な世界観
様々なメタファーに彩られた寓話です
アンヌは謎の来訪者に純潔を捧げてしまう
一家の可憐な娘役
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しかし男が去っていったことによって
突然、硬直状態に陥ってしまう…
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蔓延する負の空気感
ぼんやりとした佇まいが
えも言われぬ不安を誘います
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しっかし、つくづくすごい映画…
2人を演出するパゾリーニ監督
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アンヌは決して美人女優のタイプではないんですが
アンニュイともちょっと違う
独特のピュアな雰囲気
ひたむきな強さを秘めた
不思議な存在感を放っていました
というわけで
アンヌ・ヴィアゼムスキー
あらためて稀有な女優でしたね
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