ファーブルとナベサン
先日
とある図書室にて発見
↓↓↓
『ファーブル昆虫記』です
↓↓↓
ジャン=アンリ・ファーブル(1823-1915)は
昆虫の行動研究の先駆者として
世界的に有名なフランスの昆虫学者です
貧しい農家に生まれ
少年のときから
道路工夫などをして働きましたが
努力して学校の先生になり
その傍らで植物や生物の研究をしているうちに
やがて小さい頃から好きだった
昆虫の観察と研究に打ち込むようになります
その地道な研究は
実に60年という
長きにわたって続けられました
その間の観察記録と生態の研究をまとめたのが
この『昆虫記』です
全10巻ありますが
第1巻はファーブルが55歳のときに
最後の第10巻は
81歳のときに出版されたというのですから
驚くばかりです
僕も図書室にあった『昆虫記』のページを
つかの間
パラパラとめくりましたが
緻密な描写が興味深いですね
いつかじっくり読んでみたいなぁ
と
本書の巻頭に掲載されていた文章を
以下に転載
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「わたしはとうとう『昆虫記』の決定版を世に出すことにしました。
もうひどく年をとったわたしは、目が衰え、身体も弱り、動くことさえ思うようになりません。
だからたとえ命が続いたとしても、これ以上新しい研究を重ねて、この本に何かを書き加えることもできないと思います。
この『昆虫記』の第1巻を出版したのは1878年ーそれから40年あまりの年月が過ぎ去りました。
思えば昆虫の研究はわたしの生涯の唯一つのなぐさめでした。
それをやめなければならなくなった今、わたしの胸は様々な思い出でいっぱいです。
昆虫の世界は眺めれば眺めるほど、実にいろいろなことを考えさせられます。
わたしがもう一度、昔の元気を取り戻せたとしても、昆虫への興味が尽きることはないでしょう。」
91歳で亡くなったファーブル晩年の言葉です
と
ふと
ファーブルのことを書いていて
25年くらい前のことが
唐突に脳裏をよぎりました
僕が記録映画のプロダクションで
助監督をしていた時代の話
あの頃はよく
先輩に連れられて
夜
新宿のゴールデン街に足を運んだものですが
その当時よく行っていた飲み屋さんが
『ナベサン』というお店です
↓↓↓
(写真はネットより引用)
両壁にアングラ演劇のポスターなどが
ベタベタと貼られた
狭〜い階段を上がった2階にあり
店内はカウンターを覆うように
大量の本が無造作に積んであって
歩くのもままならないような窮屈さ
う〜ん
しかしその雑然とした風情が味わい深くて
なんとも心地良かったものです
ネットで知りましたが
どうやらここは
著名な文化人たちの溜まり場として
今でも知る人ぞ知る
老舗の名店らしいですね
ちなみにここの店主が
ナベさんこと渡辺英綱さんで
2003年に56歳で亡くなられたんですね
今はご夫人が店主を継いでいるそうです
ナベさんは本も出版されていて
当時、僕も読みました
↓↓↓
と
この店主のナベさんですが
それはもうコワモテの雰囲気で
実際すごくおっかなかったなぁ
当時、店内では
よく政治談義や文化論の話などが
知らないお客さん同士でも
平気で交わされるのが常でして
僕もつい酔った勢いで
何か喋ろうものなら
すかさずナベさんに
「そんな半端な知識で生意気言うな」
「もっと勉強しろ」
と
ハハハ
ようおこられたものです
でもナベさんには不思議な魅力があって
僕もおこられても
別にどうってことなくて
清々しい気持ちにさせられましたね
ナベさん自身
よく酔っ払ってましたのでね
まあ酒の席での楽しかった思い出です
って
話がすっかり飛んでしまいましたが
そのナベさんがいつも陣取っていた
店内のカウンターの後方に貼ってある
いろんなポスターやチラシにまじって
当時、ある人の写真が飾られていました
僕は最初そのモノクロの写真を見て
「ビートの作家
ウィリアム・バロウズですか」
って聞いたら
ナベさんに
「違う
ファーブルだよ」
って…
う〜ん
どうやら
おそらく
その当時飾っていた写真がこれ
↓↓↓
虫眼鏡で対象をジッと凝視するファーブルの
深いシワが刻まれた横顔です
ナベさんお気に入りの写真だったようで
もしかしたらファーブルの姿に
自身を重ね合わせ
その生き方に
ある種の理想を見出していたのかもしれませんね
というわけで
『ファーブル昆虫記』を見つけて
25年前の
ナベサンでの思い出が
にわかに蘇ってきた
そんな今日この頃の夜でした
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