映画『召使』
暗く陰湿な映画です
1963年製作のイギリス映画
『召使』
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監督はアメリカ合衆国出身の鬼才
ジョゼフ・ロージー(1909-1984)
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よくよく
ヨーロッパやその他の国々から
夢を追い求めて
あるいは正式に招聘されて
ハリウッドにやってきた監督は数知れませんが
う〜ん
逆パターンは
そう滅多に聞いたことがありません
ロージーは1950年代のハリウッドにおいて
にわかに吹き荒れた共産主義排斥の波
いわば赤狩りによって
ブラックリストに載せられ
1953年にやむなくイギリスへと亡命
以降、つど名前を変えながら
イギリスやフランスなどで作品を撮り続けます
つくづく時代に翻弄され
数奇な運命を辿った人ですね
しかしハリウッドのスタジオシステムの中で培った確かな手腕が
ヨーロッパの風土と溶け合うことで生まれる
異質なムード
ロージーの作品は
常に危険でアートな香りを漂わせる
独特の不条理な世界観を宿しました
『召使』は
そんなロージーの代表作の一つに数えられる傑作です
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独身貴族のトニーは
ロンドンでひとり暮らしをするために
バレットという男を召使に雇い
彼に家事一切の世話を任せる
忠実な召使として
完璧に仕事をこなすバレットに対し
しかし婚約者のスーザンは
どこか怪訝な眼差しを向けていた
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ある日
バレットが自分の“妹”を女中として雇ってほしいと申し出て
その女、ヴェラが家に入り込んだあたりから
バレットの本性が露わになり…
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エッシャーの騙し絵のように
階段の下にいるはずの召使が
高い位置にいるような
シュールな構図が
観る者に目の錯覚を引き起こします
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次第に入れ替わっていく主従の関係
貴族と庶民
主人と召使の
精神的なヒエラルキーの逆転
やがてトニーは脆くも
バレットに支配されてしまいます
とまあ
本作が
イギリスの階級社会への痛烈な皮肉
…であるのは言わずもがなですが
いやはや
実はそれにとどまりません
映画は
何気ないセリフや隠喩を用いて
二人の同性愛がほのめかされ
それによって
より重層的な様相を帯びてくるのです
よくよく
60年代当時の英国において
同性愛は社会的に許容されていない
いわば禁断の愛だったわけで
そう考えますと
本作は
上流階級であるトニーが
召使のバレットによって
人生を乗っ取られてしまう
…といった単純な話ではなく
主従を超えたところの
実質的な共依存の関係…
つまりは
切っても切れない腐れ縁に陥り
そこから逃れることができず
身も心も破滅し
社会的に抹殺されてしまう物語である
と捉えることができましょうか
いやあ
しっかし
なんといっても
バレットを演じたダーク・ボガードの存在感が光りますね
女性的な繊細さと
したたかな二面性を持ち合わせた召使を
なんとも不気味に
そしてリアルに演じています
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というわけで
ロージーのただならぬ美的センスが随所に見られ
そのアブノーマルな一面が炸裂した1本
あらためて
必見です
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