映画『ヘカテ』
つくづく
ため息が出るほど美しく
そして危険な媚薬のような映画です
1982年製作
フランス=スイス合作
『ヘカテ』
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今年、約30年の時を経て
デジタル・リマスター版が劇場公開されました
公式サイトは→こちら
監督は
スイスが世界に誇る耽美派
ダニエル・シュミット(1941-2006)
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祖父母の営む、スイスのシュバイツァーホフ・ホテルで生まれ育ったシュミットは
夜毎ラウンジで行われるパーティを覗き見たりして過ごしながら
次第に映画やオペラなどへの興味を募らせ
幼少時よりその芸術的素養を培っていきます
そうして比類なき感性を得て創造されたシュミットの映像は
う〜ん
これがすごいんです
長編第1作の『今宵かぎりは…』(1972)ですが
まあ
この世のものとは思えない
シュールで幻想的で
この上なく異様な
一度観たら忘れられない魔力を秘めていて
まさに耽美の極み
ここにありですね
ということで
本作『ヘカテ』は
そんなシュミットの洗練された美意識が随所に溢れた傑作です
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フランス植民地である北アフリカの領事館に赴任してきた外交官と
ある人妻との
狂おしいまでの恋
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映画は
外交官ジュリアンが
灼熱の砂漠という異境の地で出逢った
謎の女クロチルドに激しく溺れていく様を
光と影を駆使した幻惑的な映像で
鮮烈に描いていきます
月明かりに照らされ青みがかった部屋
う〜ん
全編これ
めくるめく官能と退廃の極致です
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男を虜にし惑わせるミステリアスな女クロチルドに
アメリカのローレン・ハットン
いやあ
ハマり役です
思わせぶりで
しかし何でも包み込むような
柔和な表情が魅力的な
このファムファタールぶり
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そしてクロチルドにのめり込む外交官ジュリアンに
フランスのベルナール・ジロドー
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クリスチャン・ディオールの白いリネンのスーツが
ひときわ映えますね
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含みが多く謎に包まれたクロチルドに対して
日増しに募る嫉妬と妄想
焦燥感に苛まれ
次第に身も心も荒み
堕落していく男の哀しき性
でもこういうのを
本質的なところで
男のロマンティシズムと言うのでしょうかね
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と
ポール・ボウルズ原作
イタリアのベルトルッチが監督した
『シェルタリング・スカイ』(1990)に先立つこと8年
本作は
第二次大戦前後の
西洋による植民地支配が根強かった時代における
アラブのエキゾチックな世界観の
いわば定型ともいえる異国情緒のイメージを創出
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闇の中を這う迷路のような路地
魔窟のような娼館
囁き合うようにしてまったりと飲む男と女
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つくづく
ストーリー云々ではないんですよね
粋なセリフと優美な音楽
どこまでもベタながら
クラシカルなムードが濃密に醸成されていて
これがいいんですよね
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それにしても全編
モロッコの風土と相まった
渋い色味が基調となっていて
40年も前の作品ですが
いつまでも映像に艶がありますね
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いやあ
こだわり抜いたであろう
色彩と空間設計に基づいた様式美
耽美派シュミットの面目躍如です
というわけで
『ヘカテ』
確かな美意識に裏打ちされた
まさに本物の映画
あらためて
必見です
おまけ
以前、僕が本ブログにて
シュミットの長編第1作について
書いた記事は→こちら
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