映画『マルケータ・ラザロヴァー』

つい先日まで

渋谷のイメージフォーラムにて上映

待望の本邦初公開でした

1967年製作のチェコ映画

『マルケータ・ラザロヴァー』

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公式サイトはこちら

監督・脚本は

チェコ・ヌーヴェルヴァーグの巨匠として知られる

フランチシェク・ヴラーチル(1924-1999)

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う〜ん

チェコの映画というのは

日本ではどうも馴染みが薄いですね

すぐに思い浮かぶところでは

チェコアニメの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルや

『ひなぎく』のヴェラ・ヒティロヴァ

はたまた

アメリカで大成したミロシュ・フォアマンなどが有名です

そうした中でチェコ映画史上最高傑作と謳われているのが

本作『マルケータ・ラザロヴァー』です

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ブラーチル監督は

「過去の出来事をなぞるのではなく

歴史の内側を直感的に捉えたい」

と語り

衣装や武器などの小道具を

当時と同じ素材・方法で作成し

極寒の山奥で共同生活をしながら

実に548日間にもわたるロケーション撮影を敢行

そうして中世の神話的世界をリアルに再現しました

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物語の舞台は

13世紀半ばのボヘミア王国(=中世から近世に存在した、現チェコ共和国の前身)

カトリックによる新しい王国支配の拡大を狙う勢力と

土着の異教徒である抵抗勢力との

果てしない攻防

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そうした血なま臭い動乱の渦中に置かれた

領主の娘マルケータの辿る数奇な運命

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あどけない彼女は

対立する領主の息子ミコラーシュに陵辱されるも

数々の苦難を経て

次第に彼を理解し愛するようになり

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貴族と盗賊、知性と野性、高潔と野蛮

キリスト教と異教という

新しい価値観と土着の信仰との激しい拮抗など

鮮烈な対立項を軸に

物語はおよそ図り知れない

収束不能な展開を見せていきます

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上映時間は怒涛の166

錯綜するプロット

雪に覆われた雪原や荒れた原野で繰り広げられる

領主間の虚しくも醜い争い

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観ていて敵味方の判別がしばし曖昧な

入り乱れる人物たち

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手持ちカメラによるアップも多用され

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終始高い熱量の映像が

シネマスコープによる

モノクロのワイド画面いっぱいに拡がります

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暴力と喧騒にまみれた画図に

覆いかぶさるように鳴り響く

厳かな聖歌の音色

エコーがかった人物たちのセリフ回しとも相まって

まるで交響曲

いやオペラを観劇しているような感覚にとらわれ

観ていて自ずと感情が昂るのを覚えます

う〜ん

明らかに異質

漂う不穏なムード

つくづく

映画は

稀有壮大な中世ヨーロッパの

荒々しくも美しい

神秘の異世界を創出します

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そして相反する価値観の狭間で揺れ動き

無惨に引き裂かれながらも

やがてマルケータは

可憐な少女から

自らの意志を貫く

強い女性へと変貌を遂げていくのです

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終盤

マルケータは

苦難の果てに修道院に辿り着き

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そこで祈りを捧げるも

しかし修道女たちの言葉を拒絶し

死に直面する異教徒のミコラーシュのもとへと歩み寄るのです

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露出オーバー気味で捉えた

真っ白な修道院の神聖で崇高な佇まい

と裏腹の

無機質で非人間的な威容

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ふと

キリスト教に

当時のチェコの共産党独裁体制を重ね合わせてしまうのは

本作が

60年代のチェコに製作されているという時代背景を考えると

自ずとしっくりきますが

いかがなものでしょうか

とまあ

つくづく

なんてすごい映画表現でしょうか

半世紀以上前に撮った映画とは到底思えません

というわけで

本作『マルケータ・ラザラヴァー』は

ブラーチルが渾身の力を結集して完成させた傑作

愛と信仰の是非を問う一大叙事詩です

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