映画『パーフェクト・デイズ』

2023年製作

日本・ドイツ合作の

『パーフェクト・デイズ』

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監督はドイツの名匠

ヴィム・ヴェンダース(1945-)

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本作は

THE TOKYO TOILET」という

渋谷区内の17ヶ所に設置された

公共トイレの快適化を推進するプロジェクトから発展して

今回の映画化へと至りました

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都内にある公共トイレの

清掃員として働く平山(役所広司)は

毎朝、同じ時間に起きて

車で仕事に出かけて

夜、寝床につくまで

決まったルーティーンを繰り返す毎日を送っている

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仕事が終わって帰宅すると

自転車に乗って銭湯へ行き

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行きつけの居酒屋で一杯やって

たまに馴染みのスナックへ行き

ママの歌に聴き入る…

スカイツリーの見える東京の下町が

懐かしくも鮮やかな情景となって

観る者の脳裏に

ゆっくりと沁み込んでいきます

淡々と流れる穏やかな日常

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古い木造アパートにひとりで暮らす平山は

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かろうじて

ケータイこそ持っているものの

パソコンもスマホも持たず

普段は

読書を愉しみ

木々に水をやり

カセットテープで音楽を聴き

フィルムのカメラで風景を撮る

休日は

撮ったフィルムを現像に出し

出来上がった写真を取捨選択して

収納ファイルにしまい

古本屋に立ち寄っては

気に入った本を買う

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そうして毎晩

寝っ転がりながら読書に耽り

眠気に誘われるまま

眠りに落ちる…

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何より彼は

毎日毎日

数ヶ所の公共トイレを巡りながら

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丹念に丁寧に

便器をはじめ

トイレ内を清掃していきます

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このトイレ清掃に

無心で取り組む平山の姿に

日本人の本質を見出す

…的なヴェンダースの視点

なのかと思いますが

このある種の慎ましさは

それはそれで

素晴らしいと思う反面

正直

少し違和感を覚える僕もいますね

よくよく

平山の

どこか世捨て人のような生き方をする人は

今の時代

そう周囲に見当たりません

ちょっと不自然で

ある意味

変わり者とも言えましょうか

劇中

平山の妹が登場し

彼の過去が少しほのめかされる以外

彼が今のような

ミニマムな生活を送るに至った背景は

映画の中で

なんら語られません

妹の出立ちから察するに

おそらく平山は

裕福な家庭の育ちでありながら

父親との確執なり

あるいは

なんらか価値観の変化があって

今のような生き方を

自ら選択したのではないか

つまりは

なかばドロップアウト的なニュアンスが

平山から感じ取れます

って

妹からしたら

兄の平山は

もしや寅さんのような存在⁈

なので平山のような人が

すなわち

日本人の気質の一端を表すのかと言われれば

う〜ん

わからなくもないですが

でもちょっと違うような気がするなぁ…

とまあ

話を戻しまして

しかし

どのような経緯で

今の生活を送っているのか

…が何であれ

平山の真摯な姿は

観ていて感銘に値するし

つくづく

人間の日々の何気ない営みの中に

凛とした美しさが垣間見え

まぎれもなく

それが作品に

たしかな説得力と

揺るぎない強度をもたらしています

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この平山の

孤独に埋没する様…

毎日、地道に仕事をし

ささやかな愉しみに耽る

そんなストレスの少ない生き方は

内心どこか

ちょっと憧れる

といいますか

むしろ

なんて優雅で贅沢なんだ

と思わせる瞬間が

本編の中に何度も見出せて

生活のルーティーンにおける

静かで味わい深く

今は失われて久しい行為の数々には

聖性が宿っているかのようです

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さらに

特筆すべきポイントは

日常における

同じことの繰り返し

…のはずが

実際のところ

必ずしも

そうはならないということ

所々

あちこちで

イレギュラーな事態が生じる

ふと

ヴェンダースが敬愛してやまない

日本が世界に誇る巨匠

小津安二郎の映画のスタイルに見る

淡々とした繰り返しと意図的なズレを

思わず想起させ

あらためて

逆説的とも言えますが

主人公、平山の日常に生じる

決して単調さに終始しない

様々な変化や偶然は

結果的に

彼の生活に

彼の人生に

かけがえのない

豊かな彩りをもたらしています

草木の間を縫って

ゆらめく光

虫の声…

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彼は毎日

神社のベンチに腰かけ

コンビニで買ったサンドイッチを食べながら

そこから見上げた木漏れ日を

カメラに収めることを日課としているのですが

その日の天候によって

光の加減であったり

風にゆらめく様であったり

見える風景も

自ずと違ってきます

つくづく

1日たりとて

同じ日はない

ということ

度々挿入される

平山が見る夢

…実験映像の断片のような木漏れ日の映像

こういうの好きだなぁ

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そうしてラスト

カセットテープから流れる音楽に身を委ねながら

車を運転する平山を映し出して

映画は終わりを告げます

その表情は

嬉しそうであり

哀しそうであり

陽の光に照らされて

なんとも言い表せない

含蓄のある表情を見せてくれます

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そうそう

カセットテープで聴く

古い洋楽や邦楽の

なんとまあ

素敵なこと

本作のタイトルも

劇中に流れる

ルー・リードの「Perfect Day」に

由来しているようです

ふぅ

それにしても

役所広司…

もう何も言うことはありません

ホント日本が誇る名優ですね

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そんなこんな

本作は

いろんな発見に満ち溢れ

ヴェンダースの詩的な映像と

東京の日常の風情が

見事に交わり

まこと美しい世界観を創出

というわけで

『パーフェクト・デイズ』

いやあ

これは傑作

是非ともオススメです

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