映画『麦秋』

1951年製作の日本映画

『麦秋』

↓↓↓

IMG_9967.jpeg

監督はご存じ

日本が世界に誇る巨匠

小津安二郎(1903-1963)

↓↓↓

IMG_9956.jpeg

本作は彼の代表作の一本で

原節子を主演にした

『晩春』(1949)

『東京物語』(1953)

と並ぶ

「紀子三部作」の2作目にあたります

う〜ん

個人的には

小津作品の中では

これが一番好きかなぁ

戦後の北鎌倉

28歳の独身女性・紀子(原節子)は

両親、兄夫婦、甥たちと穏やかに暮らしている

↓↓↓

IMG_9973.jpeg

家族や親族は「そろそろ結婚を」と

紀子のことを気にかけ

ある条件の良い縁談を進めようとしていた

しかし紀子はその縁談を断り

自らの意思で

子持ちの男性との結婚を決めてしまう

↓↓↓

IMG_9968.jpeg

このことが

家族に大きな驚きと波紋をもたらすが

やがて家族はそれを受け入れ

それぞれが新しい人生を踏み出していく

そうして

紀子の結婚をきっかけに

長年続いた家族の形も

変化を余儀なくされていく…

↓↓↓

IMG_9972.jpeg

小津の映画で

たびたび取り上げられる

家族のあり方

そこで

結婚や転居

老いや死など

様々なテーマが描かれるのですが

つくづく

家族の形は常に移り変わっていく

というテーマが

変奏を繰り返しながら映し出されていきます

本作においても

冒頭で家族が

当たり前のように一緒に暮らしています

しかしサザエさんのように

いつまでも続くかと思われる

この家族という共同体は

紀子の結婚を機に

少しずつ姿を変えていくのです

紀子の結婚は祝福すべきことですが

家族にとっては

一つの時代の終わりでもあるのです

↓↓↓

IMG_9949.jpeg

タイトルの『麦秋』は

実りを迎えた成熟のとき

つまり結婚適齢期

(…本作においては婚期を逃しかけている)

を迎えている紀子のことを指しています

と同時に

小津監督は本作について

「ストーリーよりも輪廻とか無常を描きたいと思った」

と語っているように

麦が実り刈り取られていくように

結婚や別れという

家族のあり様を通した

人生そのものの移り変わりを

象徴的に表しているといえましょうか

↓↓↓

IMG_9964.jpeg

ふぅ

それにしても

何度観ても

どの作品を観ても

小津の演出は独特です

ローアングルで捉えた

家の中の構図

人物たちの配置

しばしば真正面による人物のバストショット

↓↓↓

IMG_9960.jpeg

規則正しいテンポで積み重ねられ

反復されるショット

一定のリズムで繰り返されるセリフ回し

↓↓↓

IMG_9970.jpeg

(原節子と淡島千景との抜群のコンビネーションぶり)

どこかバレエを見ているような

物腰、所作、立ち居振る舞いの

様式的な動き

リズミカルなやりとり

独特の間

忙しない日常のはずが

しかし

映画においては

あまりに淡々としていて

不自然ですらあります

現実は決してこうではない

…のですが

う〜ん

しかし

なんというのでしょうか

観ていくうちに

なぜか

不自然が自然に見えてくる

決められた配置、動き、セリフ回しが

滑らかで一定のテンポで

スムーズに流れていく

この感じが

実際の生活

いわば現実味と

かけ離れているようで

いや

そんなことはなく

このなんとも

様式的で

ミニマルな身ぶりこそが

その実

人間の本質的な姿

そのものに思えてくるのです

いやあ

この完璧に統制された

作為的なアプローチこそが

映画の映画たる所以で

小津芸術の真髄ともいえましょうか

↓↓↓

IMG_9975.jpeg

さらには

反復が繰り返される中で

ふと

感情がこぼれる瞬間があります

↓↓↓

IMG_9962.jpeg

紀子の

結婚を決める時の

あの直感的で唐突な感じ

一見違和感のようで

しかしあのニュアンスは

なんとも

リアルな空気感

何か強い意志を感じさせます

また

終盤で

紀子が結婚を決めた本音を

義姉にコソッと話すあたり

なるほど納得で

こうした感情の機微が

時折垣間見えて

面白いですね

↓↓↓

IMG_9969.jpeg

とまあ

原節子を中心に

今回は兄役の笠智衆や

美人揃いの女優たちなど

もう安定の出演陣が最高ですね

というわけで

『麦秋』

何を今更って感じですが

なんだか

自分にも当てはまるなぁ

人生のあるひとコマに

つい思いを巡らせてしまったりして…

つくづく

静かな映画ながら

様々な去来する感情に

思わず心動かされ

しみじみとした感慨に

ひとり耽ることになる

そんな良質な映画

いやあ

あらためて

巨匠、小津による

日本映画屈指の名作

必見です

↓↓↓

IMG_9965.jpeg

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。