映画『青いパパイヤの香り』

映画評

1993年製作

フランス、ベトナム合作の

『青いパパイヤの香り』

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今観てもまったく色褪せない

新しい感覚の映画です

監督は

フランス育ちのベトナム人

トラン・アン・ユン(1962-)

彼の記念すべきデビュー作です

ベトナムの映画といえば

すぐにベトナム戦争を想起させますが

ここでは戦争は扱われておらず

このアジアの南国の

しかし中国とはまた違った風習、風俗を

初めて知る機会となった映画です

またちょっと面倒くさい表現を使えば

映画的先進国である西欧諸国の論理から

アジアの小国が脱却し

自分たち独自の文化を提示するに足る

実り豊かなその時を

静かに告げた記念碑的作品といっても

過言ではないのかなと思います

こういう映画を

フランスで西洋文化の素養を受けて育った監督が撮ったというのも

また面白いですね

まあ欧米列強による隷属やら

アジアの解放やらという

こと映画に関しては

少々バタ臭く聞こえるところから

軽やかに飛翔して

むしろフランス的エスプリというか

洗練さえも映画に取りこんで

う~ん

まったくをもって

この監督は育ちがいいんでしょうね~

ストーリーはいたってシンプル

サイゴンのある資産家の生活模様を

そこに奉公人として雇われた一人の少女の目を通して

淡々と描きながら

彼女の成長を綴ったもの

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日常にあふれる緑豊かな植物や果物

その中のひとつ

パパイヤは

少女がやがて女になるその成熟と

アジアがやがて世界を呑み込んでいくその

経済的

文化的

まあここではあくまで

映画的成熟の

まさしく萌芽を

みずみずしく暗示します

植物や果物を大写しで捉え

人々の動きを

流麗なカメラワークで重層的に追い

そして

少女は女へと変貌する

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この軽やかにして鮮やかな描出と

不自然なまでに演劇的な演出

極端に排されたセリフ

感性のテレパシー

自然光だけで撮っているように見せて

その実、計算され尽くした制御で

光をコントロールし

人物は

さながらバレリーナのように優雅に

またゆったりとしたテンポで画面に配置

そう

この映画は演劇というより

むしろバレエに近いですね

それにしましても

少女のまなざし

髪を洗う日常のしぐさ

芽吹きや

汁のあふれた葉っぱの

そしてたわわに実る青いパパイヤの

醸し出す官能

オキーフの絵を彷彿させるまでもなく

つぼみ

植物のアップは

エロスを誘います

いやあ

しっかしこの監督

並みの感性の持ち主ではありませんね

というわけで

美しい映画

来るべきアジアの時代を予見させる一本

おススメです

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