映画『第七の封印』

映画評です

先日TV放映されていたので久々に観ました

哲学的寓話にして

深遠なる人間ドラマです

1957年製作のスウェーデンの映画

『第七の封印』

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監督は

スウェーデンが生んだ世界的な巨匠

イングマル・ベルイマン(1918-2007)

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いやあ

何はさておき

映画を語る上で

この人を外すわけにはいかないでしょう

ベルイマンが世界の映画史に果たした功績は計り知れません

ベルイマンといえば宗教的な主題を掘り下げた

とかく難解な映画を撮る人

といったイメージがありますが

なんのなんの

北欧神秘主義の極致ともいうべき

その唯一無二の特異な世界観に

一体どれだけの人々が熱狂したでしょうか

ベルイマンは

高い精神性に基づく緻密で静謐な画面構成と

対話形式を主とした役者たちの即興演技などで

自身が終生追い求めたテーマ

神の沈黙

を繰り返し表現し続けました

ということで
今日ご紹介の『第七の封印』

傑作揃いの作品群の中で

代表作に数えられる一本です

タイトルは

新約聖書の「ヨハネの黙示録」に由来

冒頭にナレーションが入ります

子羊が第七の封印を解いた時天は静寂に包まれたそれは半時間ほど続いたそしてラッパを持った七人の天使がラッパを吹く準備をした

にわかに漂う死の気配

映画の舞台となるのは

ペストが流行し

終末論的な厭世観が漂う中世ヨーロッパ

10年に及ぶ十字軍遠征から帰還した騎士アントニウスの前に

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突然

死神が姿を現します

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あまりにも唐突な登場

黒装束の不気味ないでたち

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あの世へと迎えに来たという死神に対し

しかしアントニウスはそれを拒み

死神に対しある提案をします

チェスで勝負し

勝負がつくまで自分を生かし

負けたら解放しろと申し出るのです

意外にもチェス好きの死神もそれに応じ

そうしてつかの間

死神とのチェスの対局が始まります

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う~ん

なんとユニークで独創的なシチュエーションでしょうか

理想に燃えて臨んだ十字軍遠征も徒労に終わり

疲労と絶望にまみれたアントニウスは

それでも神の存在を自らに問いかけます

度々死神とチェスの対局をしながら

アントニウスと従者が

故郷の城へと帰還する道すがら

目の当たりにする数々の残酷な現実

ペストの蔓延によって荒廃した国土

それによって死に絶える者

かつての聖職者の成れの果ての姿や

群集心理によるヒステリーで

自らを鞭打つ集団などなど

神の沈黙

揺らぐ信仰心

全編を覆うペシミズム

極めつけは

ペストの流行が魔女のせいだとされて

火あぶりの刑に処せられる少女

その惨劇の場面に遭遇し

戦慄を覚えるアントニウスと従者

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ふと

現代の日本においてしばしば横行されている

ある種

公然たるいじめにも近いバッシング

生け贄を見つけ

そこをマスコミを筆頭にして

徹底的に叩く構図は

これまさに魔女狩りと同じ

終末論とまではいきませんが

社会的に欲求が満たされていない

ふつふつと不満がたまっている

これはひとつの表れでしょうか

おっと

話が逸れました

う~ん

常に己の傍にいる死神という幻想

悪魔のささやきという名のもう一人の自分

つきまとう死の予感

漂う虚無

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そんな中アントニウスは

とうとう死神に対しチェスでの敗北を認めます

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それはつまり来たるべき死の時が

刻々と近づいていることを意味していました

彼は道中知り合った

唯一救いの存在ともいうべき

素朴な旅芸人一家を

なんとか死神の魔の手から逃れさせることに成功しつつ

自らを含めた家族や一行全員の死を受容

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そしてラスト

無事生き残った旅芸人一家が

遠く丘の先に見た

死の舞踊の光景

大鎌を持った死神に導かれ

手をつないで踊る人々のシルエット

行く先は闇の国

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いやあ

なんという映画的妙味に尽きる

幻想的、象徴主義的な表現でしょうか

神と人間

生と死

善と悪

あらためて

様々な内的葛藤をはらんだ本作は

宗教の深淵に触れる

まこと稀有な傑作です

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