映画『哀しみのトリスターナ』
1970年製作のフランス映画
『哀しみのトリスターナ』
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監督はスペインが生んだ巨匠
ルイス・ブニュエル(1900-1983)
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主演はフランスの名女優
カトリーヌ・ドヌーヴ
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1920年代末のスペイン、トリエステ
16歳で親を失ったトリスターナは
母の知人だった老貴族ドン・ロペの養女となる
しかし美しいトリスターナを
娘ではなく女性として見ていたドン・ロペは
彼女を事実上の妻としてしまう
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最初はドン・ロペの言いなりだったトリスターナだが
次第に義父の求めを拒むようになり
ある日知り合った若い画家と互いに惹かれ合い
そうして駆け落ちしてしまう
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ひとり残されたドン・ロぺは屈辱に打ちひしがれるも
何の因果か
2年後トリスターナは
足を病んだ状態で彼のもとに帰ってくる
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やがて彼女は片足を切断
その後、正式にドン・ロペと結婚する
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と
この一連の出来事を経て
トリスターナとドン・ロペの関係はにわかに逆転する
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年老いて弱っていく夫に対して
自分の不幸な境遇を責め立てるトリスターナは
ある夜、発作を起こした夫を見殺しにする…
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いやはや
何とまあ
恐ろしい映画でしょうか
慎ましい喪服姿がよく似合う
細身の薄幸美人、トリスターナは
悲劇のヒロインのようでいて
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しかしその実
したたかな立居振る舞いで
夫に対する激しい嫌悪感を次第に露わにしていく
う〜ん
ピュアだった頃が懐かしい
無垢で可憐な少女から
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足を失い
身も心も荒んでいき
背反的な姿勢で悪意に満ちた言動を繰り返し
やがて妖艶な悪女へと変貌を遂げるまでの
この恐ろしいギャップ
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ドヌーヴが
底知れぬ内面
女の凄みを感じさせる圧巻の演技を披露
って
よくよく
これは当時の(今もそうかな…)ヨーロッパ社会が
ある意味、そうさせているとも言え
つまりは
社会性のある貴族の老人が醜く取り繕う様
…美しい家具や調度品(若く美しい妻すらも)などで
身の回りを固めるしかない
虚栄心の塊のような男の内実…
つくづく
貴族という身分がまとう理不尽なまでの特別感
それによって周囲が沸々と抱くフラストレーション
場を占める負の空気感
映画は
そうした社会に蔓延する不公平感を
どこか本音のところで容認できない人間の性を
ブニュエルのどこまでもシニカルな視点で
容赦なく映し出していきます
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また多分に
西洋社会の主たる基盤となる
カトリシズムの
厳格さ
保守性
ゆえの
ある種の窮屈さが
張りつめたような乾いた空気感を助長
映画は進行するにつれて
どんどんと負のスパイラルに陥っていきます
トリスターナを襲う衝撃的な片足切断の悲劇
彼女のピュアな美貌に覆い被さる
グロテスクな悪夢のイメージ
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ふと
にわかに見え隠れする
ブニュエルの
反宗教的、反道徳的な真意
う〜ん
不気味でシュールで
エロティックですらあって
これはもしかしたら
究極のフェチと言えるかもしれませんね
(ええっ⁈)
というわけで
人生における闇
男女の深淵
その愛憎の果てを捉えた不条理なドラマ
ヨーロッパ映画特有の気品と艶を備えながらも
しかし
どこまでもブニュエルの強烈な毒気に溢れた異色作
いやあ
今更ながら傑作です
演出風景のスナップ
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