映画『叫びとささやき』
先日
Amazonプライムで久々に観ましたが
いやはや
何度観ても
すごい映画…
1973年のスウェーデン映画
『叫びとささやき』
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監督・脚本・製作はご存じ
スウェーデンが世界に誇る巨匠
イングマル・ベルイマン(1918-2007)
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20世紀初頭のスウェーデン
深い森に囲まれた大邸宅で繰り広げられる
ある上流家庭の姉妹たちの物語
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末期の子宮ガンに侵され
やがて死の床に就く次女アングネスと
彼女を交代で看病する
姉のカーリンと妹のマリーア、そして召使いのアンナ
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一見仲睦まじいようで
しかし…
次第に明らかになる愛憎
彼女たちが抱えるそれぞれの事情
本作は
その剥き出しの本音と内実を
回想や妄想を交えながら
赤裸々に綴った密室劇です
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特筆すべきは
全編これ
赤で彩られた色彩設計による映像で
う〜ん
とにかく強烈です
主な舞台となる室内に至っては
壁面のクロスのみならず
しつらえられたインテリアや調度品までもが
深紅に染められ
その美しさに目を奪われると同時に
張りつめた緊張感による息苦しさと
えも言われぬ不安感を
観る者に抱かせます
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ベッドで激痛に悶える
次女アングネス(ハリエット・アンデルセン)
もう苦しそうったらありません…
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彼女の主治医との不倫に身を任せつつ
気弱な夫への欲求不満に囚われる
三女マリーア(リヴ・ウルマン)
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外交官の夫への冷めた感情を表すため
自身で傷つけた血で顔を塗りたくる
長女カーリン(イングリッド・チューリン)
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そして以前に幼い娘を亡くしたことで
神への祈りを捧げることを日課とする
召使いのアンナ
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主要登場人物の4人それぞれが見せる苦悩
どこからともなく聞こえてくる
時計の針の音とともに
文字通り
“叫びとささやき”が
様々な不協和音を奏で
屋敷内を不穏な空気で満たします
しっかしつくづく
暴力的なまでに
悪意に満ちた本心の数々
姉妹同士、夫婦同士
軽蔑と敵意
そして許しと慰めが
激しく拮抗し
複雑に絡み合います
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その根底には
愛を渇望するも
ついぞ得られないがゆえの
孤独
絶望が
厳然と横たわっています
って
女性たちが見せる性への執着
その懊悩する様の
なんとまあ生々しいこと…
と
度重なる激痛がアングネスを襲い
やがて彼女は息を引き取ります
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…が
往生しきれないのか
なんと
死者として
3人の前に再び姿を現します(!)
手を差し伸べるアングネスに対し
激しい嫌悪感を示しながら拒絶するカーリンと
キスをされて戸惑い逃げるマリーア
思いもよらぬ形であらわになる
姉妹たちの残酷な胸の内…
しかし召使いのアンナだけは
アングネスの手を取り抱き合い
まるで亡き子への想いを投影するかのように
ある種の母性愛を示します
そうして朝までアンナの膝にもたれたアングネスは
ようやく安らかな死の眠りにつくのです
神々しくも穏やかな空気に包まれて…
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アングネスを看取った後
残された家族に訪れる虚無…
ラストに流れるテロップ
「叫びもささやきもかくして沈黙に帰した」
というわけで
う〜ん
なんて美しく
そして残酷な映画でしょうか
本作は
巨匠ベルイマンが
厳格な美意識でもって
人間のありのままの姿
死と性の本質を見つめた
まさに人間の内面を抉る濃密なドラマです
つくづく
これぞベルイマン芸術の真骨頂
傑作です
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