映画『心と体と』

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2017年製作のハンガリー映画

『心と体と』

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監督・脚本は

イルディコー・エニェディ(1955-)

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長編デビュー作『私の20世紀』(1989)で知られ

1999年の未公開作以来

およそ18年ぶりの長編となります

う〜ん

なんともユニークで

観終わった後

いつまでも不思議な余韻に包まれる映画でしたね

食肉処理場の責任者であるエンドレは左腕が不自由なことから

恋愛も諦めてひとり静かに生活していた

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その職場に新たに出向してきた食品検査官のマーリア

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彼女は周囲とうまく意思疎通が図れず

社内で孤立していた

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そんなある日

職場で実施された心理カウンセリングを通して

エンドレとマーリアが

それぞれ夢の中で

鹿となって共に過ごしていたことが判明する

そうして互いに意識し合うようになる二人だが

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夢の中では鹿として自然な交流ができても

現実生活ではうまく噛み合わず

二人の距離はなかなか縮まらない

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本作は

冒頭の鹿たちが森で戯れるシーンから始まって

全編にわたり

余計な説明が極力省かれています

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マーリアがコミュニケーション不全なのは

固い表情や不躾な言葉遣いから

すぐにわかるのですが

発達障害であることや

また

(ネタバレ御免)

異常な記憶力を持っているなど

無表情な彼女の

およそ図り知れない内面は

時間の経過とともに

少しずつ察することができます

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劇中

食肉処理場での生々しい作業風景や

また

手首から流れ出る血のドクドクと脈打つ様

など

唐突にショッキングな描写を織り混ぜるあたり

言葉ではなく映像で語ることに

監督の確かなこだわりやスタイルが見て取れますが

最初は真意が読み取れず

少なからず戸惑いましたね

しかしマーリアが

生の喜びを得ようと

悩みながらアンドレに意思表示し

彼女なりにあれこれ努力する様が

なんともいじらしく

観ていて

次第に共感を覚えていきます

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それは左手が不自由なエンドレの方も然りで

日常生活に支障をきたし

終始諦念を漂わせた風情ながら

内心では

このまま人生を終わらせたくない

という

密かな願望

秘めた闘志を

多分に持ち合わせています

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そしてあらためて

思わず目を背けたくなる

牛の屠殺シーンと

鹿の夢の美しく幻想的なシーンとの

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この鮮やかな対比

つくづく

これは

二人の共通した心情を表していて

屠殺される牛には

自分たちの現実の姿が投影され

また

夢の中の鹿には

自分たちの願望が投影されているのかな

とまあ

つまるところ

二人とも

不器用なんですよね

そうして映画は

淡々と穏やかなすれ違いの中で

二人が抱える

孤独で複雑な内面を

詩的な映像の中に捉えていきます

エンドレが過ごす暗い部屋と

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コントラストを成す

マーリアの明るく白い部屋

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終盤

死を選ぼうとしたマーリアへの

エンドレの思わぬ告白

ドラマティックな高揚を排した中での

ストレートな表現に

嘘偽りのない真実味を垣間見

逆に胸が締めつけられます

う〜ん

鹿の夢を通して結びついた孤独な男女が

生をまさぐる姿を

詩的に

リアルに

切実に描いたラブストーリー

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いやあ

エニェディ監督の

優しくも現実を直視する強い眼差し

繊細かつ大胆な演出が冴えますね

というわけで

全編にわたり

まこと特異な世界観に彩られた傑作

必見です

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