映画『オンリー・ゴッド』

2013年製作

デンマーク・フランス合作

『オンリー・ゴッド』

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監督・脚本は

デンマークの鬼才

ニコラス・ウィンディング・レフン(1970-)

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ヒット作「ドライヴ」に次いで

ライアン・ゴズリングと再タッグを組んだ

異色のドラマです

ジュリアンはタイのバンコクで

ムエタイジムを経営しながら

裏で麻薬の密売に手を染めていた

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ある日、兄のビリーが

16歳の少女をレイプして殺してしまう

しかしビリーはその報復として

少女の父親に惨殺される

事情を知り自業自得だと認めたジュリアンだが

兄の訃報を聞いてバンコクにやってきた

母クリスタルに報復を命じられる

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しかしそんなジュリアンの前に

元警官で裏社会を牛耳っているという

謎の男チャンが立ちはだかる…

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ふぅ

奇妙な映画です

この監督の映画は

イマイチ要点が掴めない部分が

多々見受けられますが

う〜ん

それでも独特のビジュアルセンスの持ち主で

なんとも惹きつけられるんですよね

なんでもレフン監督は

中間色が見えづらい色覚障害を持っていて

ゆえに映像も

コントラストの強い色味が特徴的だったりします

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また撮り方も

必ずしも定型に沿っていないので

かなり異質で

ストーリーの展開が容易に読めず

ゆえに

全編を覆う

物々しい空気

思わせぶりなムードが

この先起こるであろう恐ろしい行く末を

ただ漠然と暗示するのみです

本作において

ひときわ異彩を放つのが

元警察官のチャンです

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すでに現役は退いているものの

制服警官を従えて

法で執行できない犯罪者を

私的に処刑する絶対的権限を持っています

鋭すぎる眼光

みなぎる殺気

底冷えする怖さ

いつも長い刀を背中に忍ばせ

残忍な殺しも厭わない

終始、泰然とした佇まいで

ちょっと得体が知れなかったりします

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しかし

殺しをした後には

なぜかカラオケを歌う一興ぶり(!)

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って

どうやらカラオケを

亡き者への鎮魂歌といいますか

浄化作用をもたらす

ある種の儀式の役割を担っているようです

(いやいや

単なる趣味かも⁈)

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タイの夜の街並みの喧騒

妖しくも

まばゆい光を放つスタイリッシュなネオン

不自然なまでに遅々としたテンポ

ゆったりと動く不穏なカメラの動き

スローモーションの多用

冗長な音楽

過剰な効果音

現実なのか

妄想なのか

時折、判別できない

リアルであってリアルでない映像

総じてショットそれ自体には

たしかな力がありますね

そして映画は

残酷な暴力描写を伴う

ただならぬムードとともに

徐々にボルテージを上げていき

やがて

ジュリアンとチャンとの

一騎打ちという

決定的な局面を迎えます

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結果は

一方的な展開

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神のごとき無類の強さを誇るチャンに

完膚なきまでに叩きのめされるジュリアン

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この対決シーンは

観ていてユニークで面白いですね

よくよく

ジュリアンが

クライマックスで

兄の復讐を果たす

…的な定石は

本作にはない

ハリウッドのニ枚目スター、ライアンが

無様に打ちのめされる姿は

観ていてかなり違和感で

えっ

最後に逆転勝ちもしないの⁈

とその意表をつく展開には

ただ驚くばかり…

とまあ

しかし

これはたぶんに

レフン監督の確信犯的な演出意図でしょうが

カタルシスも感じなければ

感情移入もままならず

観る者を突き放すような唐突さは

ちょっと理解が得られないだろうなぁと

感じざるを得ませんね

およそ

西洋の論理で収束されない

東南アジアの

猥雑で野蛮

どこまでも不穏で異質なムード

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ふと

謎の男チャンは

一見

ジュリアンの仇のような悪役然としながら

義を重んじる姿勢から

その実、筋が通っていて

どこか哀愁を漂わせていて

う〜ん

ちょっと共感を覚えたりもしますね

あらためて

他の出演者たちが出色です

終始、悠然と寡黙な男を演じた

満身創痍のライアン・ゴズリング

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ただならぬ狂気をはらんだ母役の

クリスティン・スコット・トーマス

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それはそうと

本作のために

家族揃ってバンコクの高層マンションに移り住み

本作の撮影に臨む様子を

レフンの妻が仔細に撮ったドキュメンタリーが

『マイ・ライフ・ディレクテッドbyニコラス・ウィンディング・レフン』

として一般公開されています

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撮影中、度々行き詰まり

「本作は理解してもらえないだろう」

「映画の全体像が掴めない」

などと絶えずこぼしながら

レフンが映画製作に励む姿が

赤裸々に映し出されていて

興味深いですね

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そんなこんな

本作は

展開がよくわからないながらも

血で血を争う

いわば壮絶な復讐劇で

全編怨念のような負の空気が漂っていて

いやあ

なんといいますか

正直

観る者を釘付けにする

異様な迫力に満ちています

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というわけで

『オンリー・ゴッド』

なんだかんだ

個人的には好きな映画

レフンの試みが功を奏したとは

決して言えないまでも

クリエイターとしての気概が

否応なく発揮された

まぎれもない野心作

これは必見です

おまけ

レフンの作品について

以前書いた記事です

◎『ネオン・デーモン』→こちら

◎『ヴァルハラ・ライジング』→こちら

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