映画『レザボア・ドッグス』
大学生だった当時
どうしてこの映画を観ようと思ったのか
いまいち記憶が定かでないのですが
ひとり渋谷の映画館で観ました
なにせタランティーノの名は当時まったく知られておらず
妙にヘンテコな名前だなという程度の印象しかなかったのですが
観終わって映画館を後にした時
タランティーノは
もうすでに僕の中でスペシャルな存在として
すっかり棲みついてしまいましたね
今回ご紹介の映画です
1992年製作のアメリカ映画
ご存じ
クエンティン・タランティーノ監督の
記念すべきデビュー作
『レザボア・ドッグス』
↓↓↓
いやあ
初めてこの映画を観たときの衝撃は忘れられません…
かれこれ20年も前のことですが
いまだ鮮明に覚えています
観終わった後
しばらく席を立てないでいましたね
こういう映画にホントたまに出くわすんですよね…
ストーリーは
強盗のために集められた
お互い素性を知らない者たちが
宝石強盗を実行するも
計画自体が警察に事前に察知され…
そして
命からがらアジトに逃げ帰った数名の中で
「この中に警察の犬がいる」
という話になり
互いに猜疑心を募らせていき
やがて…
という
まあ
ありふれた低予算の犯罪もの
↓↓↓
…ですが
かと思いきや
とんでもありません
もう
オープニングから釘づけでしたね
黒づくめの男たちによる会話のシーン
卑猥な下ネタ
エッジの効いたおかしな論調
どうでもいいことにこだわることで生まれるリアリティー
なんなんだこれは…
自在に動き回るキャメラが
男たちの生の表情をいきいきと捉えます
↓↓↓
(左上が若きタランティーノ監督で
本作に出演もしています
得意の爆裂トークで下ネタを披露)
そして本編の中で
ラジオのDJがかける70年代サウンド
『リトル・グリーン・バック』に乗って
店を出た男たちが
街を歩いてゆく様をスローモーションで撮影
男たちがゆっくり横スクロールする構図の
このクールなカッコよさ
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音楽に乗って
一人一人のアップが映し出されるのに合わせて
クレジットが流れ
やがて男たちが遠ざかっていく後ろ姿に
タイトルロールがかぶさり
文字がゆっくりと上がっていきます
↓↓↓
う~ん
言葉で伝えるのが難しい
百聞は一見にしかずですがね
のちにビデオ化されて
このオープニングからタイトルロールまでのシーンを
一体何度繰り返し観たことか…
関数と関数
この場合
70年代のサウンド
黒づくめのスーツ
男たちが歩いていく構図
スローモーション
これらが組み合わさったことで生まれる衝撃…
とにかくカッコいいのなんの
↓↓↓
タランティーノの持ち味、武器
いわばバックボーン
それは過去に浴びるように観たという
B級テイストの映画群たち
特には70年代の
マカロニウエスタンや香港映画、日本の時代劇ややくざ映画などで
タランティーノはこれら過去の映画から
素材だけでなく撮り方やアングルまでも
自作で
徹底的に引用しているのです
まあ彼の本質は
いわば熱狂的な映画オタクなんですね
しかし極めてパクリ的な視点にもかかわらず
映画は決して古ぼけず
むしろ圧倒的に今風なのはなぜなのでしょうか
使われている素材はすべて過去のものなのに…
タランティーノにかかると
不思議とまったく新しく見えてしまう
う~ん
こういうのをセンスと呼ぶのでしょう
まあタランティーノが
単なるパクリだけで映画を創ってるわけではないことは
次作の『パルプ・フィクション』で明らかになるのですが…
↓↓↓
彼には卓越したセンスがありました
それは育った環境や体験などから
自然と培われ磨かれてきた
その人独自の感性なんでしょうね
実際、世の中に
まったくの新しい発明なり表現というものは
果たして存在するのでしょうか…
ほとんどが先人たちが築いてきた遺産の上に
立っているのではないでしょうか
タランティーノの革新性は
当時誰も見向きもしなかった
70年代B級映画の中に
面白さ
カッコよさ
新しさを
見出したその類まれな感性にこそあるのかな、と
僕はタランティーノに
むしろ新しいものを創造するお手本を見るような気がします
そして組み合わせ次第でどんな表現もできるという
そんな無限の可能性を見た気がしましたね
おっと
つい脱線しました
本作に戻りますが
この映画の主要登場人物たちは
素性を明かしてはならないというボスの命に従って
皆、ブラックのスーツで固め
お互いをホワイトとかピンクとか
“色”で呼び合います
この映画のキャストは
当時ほとんど無名の役者ばかり起用されていたので
なおさら匿名性が強調され
最初は誰が誰なのか
さっぱり見分けがつきません
登場人物たちの背景や動機も
ほとんど明らかにされず
ましてや肝心の強盗シーンも
直接映し出されません
(まあここらへんは低予算がゆえの苦心の表れでしょうが…)
しかし映画が進行するにつれて
日常に根ざしたリアルなセリフ
細部にこだわった人物描写
時間軸を巧みにずらした構成から生じる意外性などから
次第次第にキャラが立ちはじめ
やがて一人一人が鮮烈な印象を持つに至るのです
後で観返してみると
ああ
この人がこんなこと言ってたんだな~
と初めて気づかされます
…と
物語の核となる要素は
ズバリ“仁義”ですかね
う~ん
一瞬で引き込まれた後
映画はあっという間に終わってしまいます
そうしてエンドクレジットに流れる
やはり70年代サウンド
『ココナッツ』の陶酔
この映像と音楽の見事なまでの化学反応
いやあ
語り尽くせませんね
ところで余談になりますが
本編の中で使われるアイテムの
“銀色”のガムテープは新鮮でしたね
当時、日本では
(今もそうかもしれませんが…)
ガムテープといえば黄土色のやつで
ああアメリカでは銀色なのか~と
素朴に思いましたね
劇中の伝説の“耳”のシーン
↓↓↓
おびただしく流れる汗や涙、血で
光沢が生じ
生々しく光る
あの銀色のガムテープには
おぞましさと同時に
美しさを覚えたりしましたね
ええっ
いやはや…
いや~、毎回映画の話は最高です。
本当に観たくなります(笑)。
基本的に映画の解説が大好きなんです。
自分の知らない、分からない部分を説明されるとワクワクします。
ありがとうございました。
>(株)第二営業部さん
ああそうでしたか~。
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