映画『動くな、死ね、甦れ!』
先日
渋谷ユーロスペースで
久々にリバイバル上映されていたので
どうにか合間をぬって観てきました~
本日ご紹介の映画です
1989年製作
ソ連のヴィターリー・カネフスキー監督の
『動くな、死ね、甦れ!』
↓↓↓
いやあ
このなにやら得体の知れない
激しいタイトルからして
もう…
ハイ
強烈極まりない映画です
監督のカネフスキー(1935-)は
無実の罪で
8年間拘留された経歴を持つ異色の監督で
53歳にして
なんと
本作が
長編デビュー作となります
↓↓↓
この映画は
監督自身の少年時代の記憶をもとに
第二次大戦直後の
極東ロシアの炭坑町を舞台に
12歳の少年の
刹那的な日々を
鮮烈に描いた作品です
…が
う~ん
このフィルムに収められている映像を
一体どう形容したらいいのでしょうか?
適当な言葉が思い当りません…
そもそも
どう見ても
1989年に撮られた映画には見えません
あたかも
1945年当時のドキュメンタリーを観ているようです
第二次大戦直後の
極東ロシア収容所の
ある小さな炭坑町スーチャンで暮らす
12歳の少年の
毎日が生きるか死ぬかの
サバイバルな日常…
↓↓↓
少年ワレルカが引き起こす
数々の悪戯や事件…
絶望と貧困にあえいでもなお
子供たちはどこまでも
たくましく生き抜こうとします
戦後の炭鉱町のどさくさ
立ち並ぶバラック小屋の匂い立つ荒廃
人々のしたたかなまでの熱気
機関車の荒々しい鼓動
シベリアの凍てつく大地
そこに時折挿入される日本の民謡
そして
少年と少女のほとばしる感情の交差…
↓↓↓
カメラは
奇跡的なまでに
原初の風景をとらえます
ある事件から故郷を追われ
やがて強盗団に拾われ
そうして次第に
悪事に身を染めていくワレルカ
無垢と下卑が入り混じる
少年の豊かな表情がひときわ印象的です
また事あるごとに
ワレルカを助ける少女ガーリヤの
母性的な存在感も忘れ難いです
と
まあ
とにかく
ストーリー云々ではないんですよね…
まず何より驚きなのが
映画はカネフスキー監督の
「よーい、スタート」
という声によって始まります
そして
衝撃のラスト
銃声と共に倒れた少女ガーリヤの遺体を前に
悲しみのあまり
一人全裸で踊り狂う母親の姿…
そこに
唐突にかぶさる
監督の声
「カメラはあの女を追え!
他の者に構うな」
ええっ⁈
ちょっとどういうこと?
う~ん
これを
一体どう解釈すればいいのでしょうか?
監督の
どこまでも前のめりな姿勢が
カメラの介在を無視してしまったのでしょうか…
これは1989年に撮影された
1945年当時を描いたドラマなのですが
まるでドキュメンタリーを撮っているような
監督の生の声…
一種の錯覚といいますか
それによって引き起こされる異化作用も手伝って
映画は異様なまでの迫力と共に
観る者を呑み込みます
この
すべてを破壊するかのごとき
底知れぬパワー
画面から溢れ出るエネルギー
やけのやんぱちさ…
この突き抜けたテイストは
80年代後半
ペレストロイカによって
抑圧からの解放が一気に進む
当時のソ連の状況を
ストレートに反映しているとは
言えないでしょうか
そういう意味で
この映画は
まぎれもなく
1989年の
旧ソ連の
“今”を映し出しています
“今”がまんま息づいているのです
そして
それにも増して
当時53歳のカネフスキー監督の
長い間
封印されてきた少年の頃の記憶が
一気にあふれ出たかのような
枯れることのない瑞々しい感性…
映画は
絶望的なまでに
汚辱にまみれた
リアルな情景を
フィルムに刻みながらも
真に聖性と呼ぶべき
きらめき
美しさを獲得しているのです
いやあ
しっかし
あらためて
見渡せば
世界にはすごい映画があるものです
ただ一言
参りました!
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