映画『雨月物語』

1953年製作

まぎれもない

日本映画史上屈指の傑作

『雨月物語』

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監督は

黒澤、小津と並び

世界にその名を轟かした巨匠

溝口健二(1898-1956)

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映画芸術の粋を極めたとされる

その驚異の映画術に世界が驚嘆

とりわけヨーロッパにおいて

溝口の映画は

熱狂的な賞賛と支持を獲得し

後世の映画作家たちに与えた影響は

多大なものがありました

中でも本作は

円熟期を代表する一本で

上田秋成の近代怪奇小説『雨月物語』のうち

「浅茅ヶ宿」と「蛇性の淫」のニ編を元に

生死の境が曖昧な

幽玄な世界を映像化しています

戦国時代

琵琶湖畔に住む陶工の一家と農夫の兄弟

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兄・源十郎は陶器を売りに

弟・藤兵衛は武士になるべく

互いの家族を連れ京へ向かうが

途中、源十郎は妻子を村に引き返させて一人で出向き

藤兵衛は女房を見捨てて、羽柴勢に紛れこむ

そうしたある日

城下町の市で陶器を並べる源十郎は

若狭姫と名乗る美女から多数の注文を受け

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彼女の邸に陶器を届けるとともに

歓待を受け

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知らず知らず

彼女に誘われるまま

関係を結ぶようになる

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一方、弟の藤兵衛は

戦場で拾った兜首を届けて侍に出世していた

しかしある夜、ふと入った宿場で

遊女に身を落とした妻と偶然再会し

己の愚かさを思い知り悔恨の念にさいなまれる

その後

屋敷の不吉な噂を聞きつけた源十郎は

若狭姫に帰郷の意思を告げ

彼女に懇願されるも

ふと我にかえると

周囲は廃屋となっていて

彼女が死霊だったことを知る

う〜ん

本作はもう見どころ満載です

霧に包まれた琵琶湖を船で渡るシーン

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途中

海賊に襲われた船が近づいてくる様の

異質なムード

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まるでこの世とあの世が

入り混じったかのような

ただならぬ空気が画面全体を覆っています

何より

お屋敷で若狭姫と戯れるシーン

まるで桃源郷のような異世界

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故郷の妻子のことを忘れ

延々繰り広げられる宴と愛欲にまみれていく源十郎

いやはや

これはもう

究極のハニートラップですね

森雅之が欲に駆られた善人の悲哀を

リアルに演じています

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しっかし

つくづく

気品漂う艶とただならぬ妖気をふりまく

若狭姫が

もう恐ろしいのなんの

演じる京マチ子がとにかく圧巻です

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そして終盤

源十郎が若狭姫の呪縛から解け

妻が待つわが家に戻ったシーン

廃屋となっている家の中を

妻の名を呼びながら

ぐるっとまわって戻ると

消えていたはずの囲炉裏には

火が灯っていて

いつのまにか妻の宮木がそこにいる

実は妻は

落武者の手にかかってすでに死んでいた

つまりは幽霊となって

夫を迎え入れているのです

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現実と霊的世界がワンカットで入れ替わる

秀逸なカメラワークです

その後

夫と子が寝ているそばで繕い物をする妻・宮木の

あまりに穏やかな表情と

静けさをたたえた風情に

ある種の憂い、儚さ

世の無常観を垣間見ます

演じる田中絹代が素晴らしいですね

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いやはや

この全編を貫くただならぬ雰囲気

妖しく幻想的なムード

観ている方は

つい

いろんなことを想像します

画面の外

見えない部分に

自ずと

思いを

あらぬ想像を

巡らせてしまいます

何を見せて

何を見せないか

1だけ見せることで

10を連想させる

つまりは想像力を喚起させる

いやあ

本作はまさにその見本のような映画ですね

また観ていて

物語を追っかけるのみならず

情景や家屋、調度品、人物たちの衣装

細部にまで目を配り

和楽器の根源的な音色に耳を傾け

何より

幽玄な映像美が織りなす

その深淵なムードに

どっぷりと浸ることができるのです

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いやあ

あらためて

なんてすごい映画でしょうか

というわけで

戦国の世という動乱期を舞台に

生と死

現実と幻想を

独特の世界観の中に描出した

『雨月物語』

溝口監督の思想と力量が凝縮した

日本映画史上

稀に見る傑作

今更ながら必見です

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