映画『モダーンズ』

先日

上野の国立西洋美術館の常設展で観た

一枚の絵がちょっと気になりまして…

キース・ヴァン・ドンゲン

《カジノのホール》(1920)

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1920年代

世界各地からいろんな芸術家が集まり

主にパリのモンマルトルやモンパルナスで

ボヘミアン的な生活を送りながら

各々の表現を自由に花開かせていった

そんな「エコール・ド・パリ」 の画家のひとりとして

ヴァン・ドンゲンは

その官能的な作風などで

独自の作品世界を創造していったのですが

ふと

ヴァン・ドンゲンのこの絵と

似たような絵を

ほかで観たことがあるような、ないような…

そうして

つらつら記憶を手繰り寄せてみると

そうそう

昔観た映画のポスターにありました

それがこれ(!)

1988年製作のアメリカ映画

『モダーンズ』

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実はこのポスターは

ヴァン・ドンゲンの作品が元になっています

オリジナルがこちら

モンパルナス・ブルース》(1920)

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細長い人体の表現スタイルのまま

それを映画の登場人物にはめ込んだ

パロディによる絵画のポスターです

まあ本作が

1920年代のパリを舞台にした

贋作を巡るお話なので

なるほど

なかなか洒落た発想だなと納得

ということで

本作『モダーンズ』

監督は雰囲気描写に定評のある

アラン・ルドルフ(1943-)

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1920年代のパリ

シカゴから来た売れない画家のハートと

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資産家のアジア人、ストーンとの確執

2人はレイチェルを巡って諍いとなり

やがてリングで決着をすることに…

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その一方でハートは

伯爵夫人から

贋作の制作を依頼される

夫人が伯爵の夫と別れるに際し

自宅にあるセザンヌ、マティス、モディリアーニの絵を

アメリカに持って帰りたいが

夫にバレないように

贋作を作っておきたいのだと言う…

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新しい芸術

いわばモダンアートが花開いていた

20年代当時のパリの風情

行きつけのカフェで

芸術家たちが議論を戦わせ

酒に恋に

酔いつぶれていく

映画は

そんな熱く華やかな時代を

絵画、文学、音楽、ファッション

やがて映画と

当時のトレンドを散りばめながら

ノスタルジックなムードたっぷりに描写していきます

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モノクロとカラーを効果的に使用した

20年代パリの街の情景の

リアルで混沌とした様子

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レトロな色調による渋い映像がひときわ映え

その時代を生きた人々の

ファッションも素敵で

粋を貫くような

ある種、気取ったスタイルも

観ていて楽しいですね

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映画は

気怠くも魅惑的な

この時代の文化・風俗が

忠実に再現されています

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物語の軸をなす

贋作の騒動は

絵画にまつわるくだりなので

なおさら

僕は観ていて興味深かったですね

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そして

登場人物の中で

ひときわ鮮烈な印象を残すのが

資産家のストーンを演じた

ジョン・ローンです

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黒づくめのシャープなスタイル

黒髪のパーマヘアに

立派な髭を蓄えた艶のある色男ながら

知性のない軽薄でエキセントリックな

成金の男を

嬉々として演じています

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感情剥き出しでいがみ合う様

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いやあ

ジョン・ローンといえば

80年代当時は

『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(1985)

『ラストエンペラー』(1987)

の成功で

スター街道まっしぐらでしたからね

さすが本作においても

ひとり気を吐く怪演ぶりで

主演のキース・キャラダインを

完全に食っていましたね

おかげで正直

作品のバランスが崩れた感がありますね

それほど観る者を釘付けにする

強烈な存在感でした

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そんなこんな

映画は

モダンアートの最前線が

パリからニューヨークへと移り変わり

その象徴となるMoMAを映し出して

終わりを告げます

よくよく本作は

物語や人物造形の掘り下げよりも

時代のムードや空気感

習俗の描写に力点を置いた作りで

そういう意味では

ルドルフ監督の持ち味が

いかんなく発揮されたと言えましょうか

というわけで

『モダーンズ』

上述のヴァン・ドンゲンの絵画から

思わず想起させられた

「エコール・ド・パリ」の時代を描いた佳作です

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