映画『憐れみの3章』

まだどこかで上映中でしょうか

2024年公開

アイルランド・イギリス・アメリカ合作の

『憐れみの3章』

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監督はご存じ

ギリシャの若き鬼才

ヨルゴス・ランティモス(1973-)

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う〜ん

前作『哀れなるものたち』の衝撃が

生々しい記憶として

いまだ脳裏にこびりついている状態ながら

ええっ

もう次が出たの⁈

と間髪入れぬ新作の公開に

驚くばかりの今日この頃

そうして

ほぼ前情報なしで

期待せずに観た本作は

いやはや

これが前作に劣らずのトンデモ映画でして

つくづく

ランティモスって監督は

まあヘンタイですね…

本作は

コテコテに作り込んだ

前作『哀れなる…』とは

打って変わったスタイルで

以前の作品

『聖なる鹿殺し』や『ロブスター』などに近い

シュールなブラックコメディです

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映画の構成は

第1章「RMFの死」

第2章「RMFは飛ぶ」

第3章「RMFはサンドイッチを食べる」

と題された

3つの独立した章から成り立っていまして

それぞれの章で

同じ俳優が異なった役を演じています

各章のタイトルにつけられている

“RMF”という謎のオッサンが

狂言回しでもない妙な立ち位置で

全章にさりげなく登場するという共通項以外

それぞれの章は

何の脈絡もないようですが

もしかしたら

時と場所、状況設定や

そのほかマニアックなところで

何かしら関連している点が

あるかもしれませんが

そこらへんは

一見した限りでは見出せませんでしたね

それにしても

なんとまあ

不思議な映画

謎めいていて

意表を突いた展開

しっかし面白い

淡々と描かれる不穏で奇妙な世界観に

戸惑いを通り越して

もう笑うしかありませんでしたね

第1章

ひとりの権力者に

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仕事から性生活に至るプライベートの全てを掌握された

主体性ゼロの男が

権力者から逃れようと抵抗を試みるも

あえなく頓挫

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元の木阿弥状態に陥る

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第2章

海洋調査に出て行方不明になった後

性格も好みもすっかり変わって帰ってきた妻に対して

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別人ではないかと疑念を抱く夫の

苦悩の果ての誇大妄想ぶり

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第3章

カルト教団の信者の女が

新たな教祖を探すべく

特別な条件にかなう女性を探し出そうと

ひとり暗躍する

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つくづく

本作のテーマは

ひと言で表すなら

「支配と隷属」

となりましょうか

3つの章には

それぞれ

どれも

暗黙のルールが敷かれています

登場人物たちは皆

この奇妙なパラダイム、思い込み

…に沿って生きています

どういうわけか

人々はそこに

精神的に囚われています

それぞれの特異な視点

…に

映画は

世界は

完全に支配されています

う〜ん

ブラックジョークですね

一体何のアイロニーでしょうか

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ふと

もしや

この不条理な

目に見えない

実体としてはなんら存在していない

しかし皆の頭の中にたしかに存在していて

無意識に縛りつけているルールのことを

人は

神と呼ぶのでしょうか?

果たして

どうなんでしょうか…

まあ

1章にしろ

とんでもない無理難題を

拒否することができるはずなのに

…できない

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2章では

現実と妄想の境目が曖昧な中で

夫の無茶な要求にことごとく応える不可解な妻…

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3章に至っては

文字通り

カルト宗教における

異様な戒律を

あたかも遵守して当たり前のような

マインドコントロール下に

人々は置かれています

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どことなく各章とも

宗教的なニュアンスが立ち込めますね

人物たちは

淡々としていながら

しかし頑なで

絶えず何かに囚われている

ふぅ

不気味で

滑稽で

エロくて

そして

どこか儚い…

露悪的なまでに

あからさまな描写…

映画は

ひたすら

人々の

理不尽極まりない行為を追います

人間界の生態

とでもいいましょうか

あたかも

原始社会におけるような

人間の赤裸々で本質的な姿を

彼らの理不尽で

およそ理解不能な行為の数々を

まるで

昆虫を見るような冷めた眼差しで

ある種

客観的に

何の感情も交えずに

淡々と凝視し続けます

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ふと

ウォーズマンのように

登場人物の顔面が

パカッと外れたような

奇妙なポスタービジュアルの真意は

いろんな顔を

章ごとに取っ替え引っ替えしてみせる

登場人物たちを表現したまででしょうが

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ふと

その一方で

人間の皮をかぶった

得体の知れない物体

…のような

観ていて

予測がつかない

僕らが抱くイメージや想像力の範疇を

軽々と越えてくる奇妙な言動

第2章がまさにそうであるように

同じ顔をしていて

実際のところ

中身は別者

では一体

何者⁈

と言わんばかりの

異常な”何か”を秘めた

非人間的な

いや

もしや宇宙人ではないのか

とさえ思わせる

そんな違和感に包まれていて

厳選されたユニークなサウンドも相まって

全編、異質なトーンで形成されているのです

つまるところ

およそ理解不能な

底の知れない人間の抱える闇

とでも言いましょうか

って

本作の舞台は

果たして本当に

地球なのでしょうか

映し出されるのは

まるで地球とそっくりな

宇宙のどこかの物語のような

そんなある種

SF的な不条理を喚起させる

まこと奇妙奇天烈な世界観なのです

ふぅ

囚われた世界を描いているのに

映画は何の先入観にも囚われていない…

その自由な映像表現には

ホント感心する限りですね

つくづく

観る者の頭の中にある

常識やモラル、価値観の枠を

粉々に粉砕する

そんな破壊力を持った

怪作に違いありませんね

そして

あらためて

演じる役者たちが

とにかく不気味で魅惑的

エマ・ストーンも

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デフォーも

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ジェシー・プレモンスも

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マクダウェルの娘の

マーガレット・クアリーも

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みんな揃いも揃って

圧巻の演技を披露します

おっと

愛車のダッジ・チャレンジャーで

無駄に爆走し

無表情に踊り狂うエマが

もう最高です

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というわけで

つい長々と書いてしまいましたが

『憐れみの3章』

いやあ

これはすごい映画

一回観ただけでは

とても咀嚼しきれません

何か目に見えない隠れた視点が

どこかに横たわっているのではないかという

そんなあらぬ妄想を

掻き立てずにはいられませんね

いやあ

ランティモスの才気がちょっと恐ろしい

本作は

観る者の感情をざわつかせる

まこと驚くべき傑作です

おまけ

ランティモスの映画について

僕が以前書いた記事をご紹介

◎『聖なる鹿殺し』→こちら

◎『哀れなるものたち』→こちら

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